すると、恭平が新に向かって怪訝な表情を示していた。
「おいおい、持ち場離れて大丈夫なのか?」
「うん。注文分作り終えて材料使い果たしたし」
「え⁉︎」
「だからもう作れない」
「なんだよ早く言えよー」
澄まし顔で超重要なことを話す新に、恭平は呆れつつもすぐに行動を起こした。
他の接客中だったクラスメイトに営業終了を知らせ、廊下で待たせているお客さんへ謝罪に向かった。
調理担当リーダーの梨田もそれに加わる。
ごめんねー!と朗らかな笑顔で謝る恭平。
そして、こんなこともあろうかと明日使える入場優待券を事前に用意していた賢い梨田の計らいで。
え〜!と残念そうな声が聞こえたものの、クレームにはならずに済んだ。
さすが現役接客スタッフと梨田さん。と感心する鞠。
慌ただしい空気を背中に感じながら、協力してくれた新に向かってお礼を述べる。
「新くん本当にありがとう、迷惑かけてごめん……」
「全然、意外といけたよ」
なんの苦労も感じていなかった様子の新。
その反応に新らしさを覚えた鞠は、目尻を下げてつい笑い声を漏らしてしまった。
「ふふ、ほんと何でもできちゃうね新くんって」
「……やっと笑ってくれた」
「え?」
ふと視線を上げると、切なげに微笑む新が映し出されて時間が止まったような感覚に襲われる。
だけどそれは、謝罪を終えて戻ってきた恭平と梨田の会話によって、我に返ることができた。
「さてと! じゃあ清掃すっかー」
「そうだね。光島くんも接客お疲れ様」
「梨田さんもね! ほら新も清掃始めるぞ、鞠ちゃんは怪我人だから座って休んでて」
学祭一日目の終了時間まであと一時間半。
材料を使い果たしてしまった一組のクレープ屋さんは、明日に備えて一足先に清掃をはじめることにした。
しかし、何を思ったのか新は突然鞠の右手を取って――。
「美化委員の活動あるから俺たち抜ける」
「っ……⁉︎」
恭平と梨田にそう告げた新は、戸惑う鞠を気にも留めず。
美化委員の二人だけで教室を出て行った。



