項垂れる北斗が抱えていた後悔の念は、唯子にはしっかり伝わっていた。
幼馴染を心配する優しい心が、そうさせてしまったことも。
北斗がどれほど、無自覚の中で鞠を思っていたのかということも。
「鞠ちゃん、北斗の話聞いてどんな様子だったの」
「……“とっくに傷ついてる”って言って、泣いてた」
顔を歪めて小さくそう呟いた北斗に、唯子も胸を痛めた。
すると何を思ったのか新が徐々に近付いていき、北斗と視線を合わせて静かに話しはじめる。
「あんたのことは責めない。鞠を思っての行動だったなら、仕方ない」
「……でも、二人の仲を壊すようなことを」
「壊れてない、大丈夫だから」
「っ……」
昨日、キスを拒まれたことで鞠を好きでい続けたい気持ちが、折れてしまうかと思った。
でも、鞠が自分から離れようとしていた理由がわかって、少しの希望が見えてきたから。
もう一度、ちゃんと鞠と話したいと強く願った新は、安心させるように北斗の肩を叩く。
しかし、その余裕たっぷりな雰囲気が北斗の嫉妬心を少しだけくすぐってしまい、つい意地悪なことを口走る。
「ま、鞠が一条のこと好きとは、かか限らないぞ」
「こら北斗!」
この後に及んでまだそんなことを!と唯子が北斗のお尻をバシンと叩くと、背筋をピンと伸ばして痛がる。
それでも、新には絶対的な自信があったから、北斗の言葉を聞いても不敵な笑みで宣言した。
「もう、俺から手放すことはないから」
「っ……!」
「好きになってもらうまで、待つし」
今この瞬間、北斗は新が顔だけでモテている男ではないと知って、心の棘が解けていくのを感じた。
きっと鞠はそんな一面を持つ新だからこそ、心を許していったんだ。
北斗が、彼女の唯子に心を許していったように――。
「なんか、かっこよくてムカつくけど」
「あ、そう」
「でも、鞠のことよろしくお願いします」
かつて、鞠が想いを寄せていた北斗という人間は。
鞠の幸せを一番に祈り、新に向かって深々と頭を下げた。



