「こはく、もう少しだよ。こはくの好きだった公園……きっとみんな待っててくれるから」



 一周忌を迎えて、わたしは庭を掘り起こした。

 ずっとずっと待っていたの。この一年が速く流れてくれるのを。速く流れてしまうのを。

 あなたは何本もの骨と……見事に立派な甲羅を残してくれていた。

 今わたしはその甲羅を抱えて、こはくが遊んだ公園に向かっている。大きなリクガメが闊歩しているって、近所では良く噂になっていたよね。小さな子供達がおっかなビックリ集まってきて、あなたは自分の背にその子達を乗せてあげていた。



 通りを見渡せば、心地良い陽の光が街中に注がれている。

 だから行こう。だから急ごう。あなたが好きだったあの場所へ──。



「──あぶないっ!!」



 ──え?



 その時どこからか聞こえた声に、わたしはふと振り向いた。つと立ち止まった。

 見える視界が一気に……闇色に染められていく?



「あ……」



 耳をつんざくクラクション。急ブレーキの(きし)み、轟く悲鳴……

 大きな衝撃が身体を弾き飛ばしたのに、わたしが一番気にしていたのは、宙を舞うこはくの甲羅だった──。