それから一ヶ月後──。

 一生懸命励んだリハビリのお陰で、わたしは無事に退院を果たし、進級試験前の大学にも復帰出来た。

「おはよう、こはく」

 ベッドサイドのテーブルに置かれた、琥珀色の砂時計に朝の挨拶をする。

 上下をひっくり返してサラサラと落ちるその淀みない様子に、自然と笑顔が零れた。

 こはくの『カケラ』を粉にして、作ってもらった砂時計。

「父さん、母さん、行ってきまーす!」

 こはくが守ってくれたこの命で、こはくの分まで生きるんだ。

 時の流れにダラダラと流されるのではなく、立派に泳ぎきると決めたから!

 だからこはく、これからも天国でわたしを見守っていてね。

 そしていつかずっとずっと先の未来、『虹の橋』のたもとにわたしを迎えに来て──その大きな美しい甲羅に、再びわたしを乗せて虹を渡るために──!!



   【完】