「きっと……天国にいるこはくが、あなたを守ってくれたのね……」

「……え?」

 天井を向いたまま黙りこくってしまった気まずい視線を、母さんのその台詞がふと戻させた。唇を震わせて涙を(こら)える母さんの面差しは、感慨深そうにわたしの向こうに移された。

 重い身体を何とか返して、母さんが見詰める戸棚の上に目を留める。

 そこには大きな透明のガラス瓶が置かれていて、何かが詰められているようだった。

「ダンプの運転手さんが全部拾ってくださったのよ。ぶつかる寸前、あなたが大事そうに抱えていたのに気付いたのですって。すっかり壊れてしまったけれど、せめてもの償いにと……崩れた欠片(かけら)まで集めてくださって。飛び出してご迷惑を掛けたのは……あなたであるのにね」

「……」

 母さんにお願いをして、わたしは上半身を起こしてもらった。寝台の向こう側に回った母さんから、大切そうに手渡されるガラス瓶。その中には──粉々に砕け散ったこはくの『カケラ』が収められていた。

「こ、はく……」

 硬いガラス面をギュッと握り締める。その手に涙が数滴落ちた。こはく、ごめんね……わたしが周りも見えなくなるほど心の流れに身を任せてしまったから、あなたをこんな目に遭わせてしまった。