「ちょ、ちょっと待って、ナースコールしちゃうから! ……あ~あの、看護師さん!? 娘が目を覚ましたんです!!」

 解き放たれて辺りを見渡す。涙に顔を濡らした母さんが身を起こして、スピーカーからの呼び掛けに慌てたように応答した。

 やがてお医者様と看護師さんが現れて、わたしの身体の様子を診てくれた。「これでもう心配は要りません」笑顔のお医者様に告げられて、母さんは腰を抜かしたように折り畳み椅子に座り込んだ。

「ご、めんね……母さん。心配、掛けて……」

 突然道路に飛び出したわたしは、そこへ走ってきたダンプカーにはねられて、丸三日も昏睡状態だったのだという。

「とにかく生きていてくれて良かったわ。父さんも向かっているから、それまでまた眠る? あーでも、もう目を覚まさないなんてよしてちょうだい! 本当にあんな大事故で無事だったなんて……奇跡としか言えないんだから!!」

 母さんは喜びと驚きと安堵で、その仕草も言葉もめまぐるしく落ち着かなかった。とっても心配してくれてたんだ……なのにわたしはこはくのことばっかりで、頭が一杯だったなんて──。