Cherry Blossoms〜あなたに想いの花束を〜

だが、男の子の頭から流れる出血量は酷く、父親の服や手だけでなく、地面すら赤く染めていた。そんな中、一花は「大丈夫ですか？」と言いながら男の子の診察を始める。桜士もそれに加わった。

「頭部の傷がかなり深いですね。もしかしたら頭蓋骨の骨折もあるかもしれません。とりあえず、止血をします」

一花がそう言い、自身の持っているかばんの中から手拭いを取り出し、男の子の傷の止血を始める。傷はかなり深く、ただ縫うだけでなく頭部のレントゲン撮影なども必要になってくるだろう。桜士は救急車を呼び、一花の応急処置の手伝いを行う。

「本田先生、ここを少し押さえてもらっていいですか？」

「はい」

男の子が不安にならないよう、「もう大丈夫よ。よく頑張ったね」と一花は声をかけながら応急処置を続ける。その優しい表情に、桜士は心がかき乱されていくのを感じた。

（ああ、困ったな。こんな時なのに……）

一花への想いは、どんな時でも存在してしまう。一花の些細な行動で胸が高鳴ってしまうのだ。