薫は縋るように桜士に言う。桜士は黙ったまま、心の中にフツフツと沸き起こる怒りを感じていた。
桜士が研修医だった頃、色んな科を回って色んな病気と向き合い治そうと頑張っている人と出会ってきた。その中には乳がんと診断された人もいた。
『やっぱり、検診は毎年受けなくちゃダメね。忙しいからって検診を受けなかった私が悪い。先生、手術お願いします』
『自分の母親が乳がんになったから覚悟してたけど、診断されちゃうとちょっと怖いね。お母さんもあの時、こんな気持ちだったのかな?』
『胸を切らなきゃいけないって、やっぱりショックだな。自分の娘には毎年検診を受けるよう、ちゃんと言わなきゃ』
乳がんと診断された人の顔が頭に浮かぶ。みんな、病気を受け止めて治療に専念していた。そしてその家族も、決してそんなことを言わなかった。だからこそ、薫が同じ人に桜士の目には映らなかった。
「速水さん、お言葉ですがーーー」
桜士が研修医だった頃、色んな科を回って色んな病気と向き合い治そうと頑張っている人と出会ってきた。その中には乳がんと診断された人もいた。
『やっぱり、検診は毎年受けなくちゃダメね。忙しいからって検診を受けなかった私が悪い。先生、手術お願いします』
『自分の母親が乳がんになったから覚悟してたけど、診断されちゃうとちょっと怖いね。お母さんもあの時、こんな気持ちだったのかな?』
『胸を切らなきゃいけないって、やっぱりショックだな。自分の娘には毎年検診を受けるよう、ちゃんと言わなきゃ』
乳がんと診断された人の顔が頭に浮かぶ。みんな、病気を受け止めて治療に専念していた。そしてその家族も、決してそんなことを言わなかった。だからこそ、薫が同じ人に桜士の目には映らなかった。
「速水さん、お言葉ですがーーー」

