偽物になった胸ーーーそれを聞いて桜士の脳裏にある病名が浮かぶ。それと同時に、スッと心が冷えていく感覚を覚えた。
「……乳がんですか?」
桜士がそう訊ねると、「そうだ!全く恥ずかしい!」と薫は怒りで顔を赤く染めながら言う。その隣で瞳は今にも泣き出してしまいそうな顔をしていた。
乳がんを発症した場合、腫瘍ができた部分を手術で切除しなければならない。胸部の一部だけを切除する場合もあるが、乳房全てを切除する場合もある。薫が話した「偽物の胸」というのは、再建手術により新たに作り直した乳房のことだろう。
「……その言葉、本気で言ってますか?」
桜士は拳を握り締め、訊ねる。薫は考えることもなく「本気だが?」と冷たく言い放つ。刹那、隣に座っている瞳は顔を両手で覆い、静かに泣き出す。だが、薫は止めることをしなかった。
「この歳で病気のせいで結婚の話がなくなったなんて、親戚中の笑い者だ。偽物の胸や傷跡なんて醜いだけだし、恥だ!九条くん、君なら酷い傷跡を見慣れてるだろ?こんな醜い娘でも貰ってくれるだろ?」
「……乳がんですか?」
桜士がそう訊ねると、「そうだ!全く恥ずかしい!」と薫は怒りで顔を赤く染めながら言う。その隣で瞳は今にも泣き出してしまいそうな顔をしていた。
乳がんを発症した場合、腫瘍ができた部分を手術で切除しなければならない。胸部の一部だけを切除する場合もあるが、乳房全てを切除する場合もある。薫が話した「偽物の胸」というのは、再建手術により新たに作り直した乳房のことだろう。
「……その言葉、本気で言ってますか?」
桜士は拳を握り締め、訊ねる。薫は考えることもなく「本気だが?」と冷たく言い放つ。刹那、隣に座っている瞳は顔を両手で覆い、静かに泣き出す。だが、薫は止めることをしなかった。
「この歳で病気のせいで結婚の話がなくなったなんて、親戚中の笑い者だ。偽物の胸や傷跡なんて醜いだけだし、恥だ!九条くん、君なら酷い傷跡を見慣れてるだろ?こんな醜い娘でも貰ってくれるだろ?」

