桜士は時間が空くとすぐ、一花に連絡を取るようにしている。そして、今日のように遊びに行くことにしたり、ご飯を食べに行ったり、一花との時間を作る。あの言葉を言うために。

「くじょうーーーじゃなかった!本田先生、お待たせしました!遅れてしまい、申し訳ありません!」

一花が小走りでやって来る。潜入捜査が終わったとは言え、公安警察は表に立ってはならない存在だ。そのため、一花や自分の正体を知ってしまったeagleのメンバーには外では「本田凌」と潜入中に使っていた偽名を言うように言ってある。

「まだ待ち合わせ時間の十分前です。俺が楽しみで早く来てしまったので、四月一日先生は遅れてなんかいませんよ」

桜士はそう言い、一花に笑いかける。目が合っている、話している、声を聞いている、それだけで桜士の頰が赤く染まる。

「そのワンピース、とってもよく似合ってます。バレッタも素敵です」

一花は、花柄のピンクのワンピースを着ており、髪はリボンのバレッタが飾られている。自分のためにいつもおしゃれをしてくれているのか、と桜士は一花を見るたびに嬉しくなってしまう。