「会うだけと言っているが、向こうは本気で本田先生のことを気に入っているんだろう?断れるのか?」

インド出身の薬剤師兼臨床工学技士のリティク・タゴールが心配そうに言う。会ってしまうともう相手と付き合わなければならないのでは、という不安はまだあるのだろう。

「会った時に相手にはきちんと言う。いや、言わないといけないんだ」

以前の桜士ならば、利用できるものは何でも利用としようと好きでもない相手との結婚も承諾していただろう。相手が求めるのならば偽りの愛の言葉を言い、欲を処理するために相手を抱き、偽りの家族を作っていたかもしれない。だが、今はあの頃の桜士とは違う。

「でも、何だか嬉しいな。一花をこんなにも想ってくれる奴がいるなんてさ。きっと一花を幸せにできるのは、本田先生じゃないと無理だと思う」

オーストラリア出身の看護師であるオリバー・ホープが桜士に笑いかける。一花のことをよく知っているeagleのメンバーにそう言ってもらえると嬉しくなる。桜士は、「ありがとう」と言いながら俯いた。