「でもその相手には振られているんだろ?なら、問題ないじゃないか。会うだけでもいいから頼むよ」

安藤警視正はそう言うと、空き部屋から出て行ってしまう。桜士は胸の奥から込み上げてきた怒りを必死に堪え、拳を握り締める。

「俺が好きなのは四月一日先生だ!」

結ばれることがなくても、彼女以外の女性と恋をして結婚する未来など考えられない。だが、このお見合いをすっぽかすことなどできるはずがない。警察は縦社会。上の者には逆らえないのだ。

「ハァ……」

お見合いのことを憂鬱に感じながら、桜士はスーツの内ポケットからスマホを取り出し、ある人物たちに連絡を取った。