「それと朝陽くん、悪いが冴実をここから連れ出してくれないか?」
「おじいちゃん」
祖父が顔をしかめつつ彼に頼みごとをしているのを聞いて、私はあわてて止めに入った。
「ここにいても泣いてばかりだろ。心配ならまた明日来ればいい。今はたっちゃんがいてくれるから大丈夫だ」
入院の準備を終えた母がこのあとやって来るとはいえ、辰巳さんに任せて私が先に帰宅するわけにはいかない。
ブンブンと首を横に振ったけれど、隣にいた辰巳さんがやさしい笑みを浮かべて私の背中を擦った。
うなずいているところを見ると、そうしなさい、という意味だろう。
「倫治さん、彼女の気持ちが落ち着くように車を走らせてきてもいいですか?」
「そうしてくれるとありがたい。家にいるより外の空気を吸って気分転換したほうがいいよな。朝陽くん、頼むよ」
祖父の言葉に辰巳さんも再びウンウンとうなずき、ほら、と私の腕をそっと引っ張る。
促された私は立ち上がり、祖父と辰巳さんにあいさつをしてから点滴室の部屋を出たものの、彼が今からどこに向かおうとしているのかまったく見当がつかなかった。
私を元気付けるために、話をしながらあてもなくブラブラするつもりだろうか。
病院の駐車場に停められていた車は、当たり前だがこの前のキャンピングカーとはまったく違っていた。
だけど高級そうだという部分は共通していて、左半分が赤十字で右半分が蛇のようなデザインのカッコいいエンブレムが付いているので、これも外国の車のようだ。
彼が黒いボディの助手席の扉を開けると、車内はラグジュアリーな空間が広がっていた。
「素敵な車ですね」
「本革のレザーシートだから座り心地はいいよ。さぁ、乗って」
「はい」
「おじいちゃん」
祖父が顔をしかめつつ彼に頼みごとをしているのを聞いて、私はあわてて止めに入った。
「ここにいても泣いてばかりだろ。心配ならまた明日来ればいい。今はたっちゃんがいてくれるから大丈夫だ」
入院の準備を終えた母がこのあとやって来るとはいえ、辰巳さんに任せて私が先に帰宅するわけにはいかない。
ブンブンと首を横に振ったけれど、隣にいた辰巳さんがやさしい笑みを浮かべて私の背中を擦った。
うなずいているところを見ると、そうしなさい、という意味だろう。
「倫治さん、彼女の気持ちが落ち着くように車を走らせてきてもいいですか?」
「そうしてくれるとありがたい。家にいるより外の空気を吸って気分転換したほうがいいよな。朝陽くん、頼むよ」
祖父の言葉に辰巳さんも再びウンウンとうなずき、ほら、と私の腕をそっと引っ張る。
促された私は立ち上がり、祖父と辰巳さんにあいさつをしてから点滴室の部屋を出たものの、彼が今からどこに向かおうとしているのかまったく見当がつかなかった。
私を元気付けるために、話をしながらあてもなくブラブラするつもりだろうか。
病院の駐車場に停められていた車は、当たり前だがこの前のキャンピングカーとはまったく違っていた。
だけど高級そうだという部分は共通していて、左半分が赤十字で右半分が蛇のようなデザインのカッコいいエンブレムが付いているので、これも外国の車のようだ。
彼が黒いボディの助手席の扉を開けると、車内はラグジュアリーな空間が広がっていた。
「素敵な車ですね」
「本革のレザーシートだから座り心地はいいよ。さぁ、乗って」
「はい」



