ちゃぽんと音を立てて、バスタブに浸かる。すると体の内側から、ジワジワ温まってきた。

その温もりが、まるで理央そのもののようで。ふいに、さっきの出来事を思い出す。


――ん……、んっ!?


あの時に感じたのは「あ、普通のキスじゃない」っていう不安だった。

まだ心の準備が出来てなくて、反射的に目を瞑った。

普通のキスなら大丈夫なのに、少し変わっただけで、こうもついていけない自分。

それが情けなくて、申し訳なくて。


「あの時の理央の顔。笑ってたけど……傷ついたよね。絶対」


理央は優しい。そして優しいからこそ、絶対に私を傷つけない。

例え、いくら自分が傷つこうとも、私だけは何が何でも守るような――理央の優しさは、そんな尋常じゃないふり幅の間で働いている。

でも、その優しさに甘える「だけ」は嫌。私も理央に優しくしたいもん。

でも――出来なかった。また理央を傷つけた。今日の私は、失敗してばかりだ。