アリスの目に、ジワジワ涙が浮かぶ。ソレはギリギリのところで、零れずにとどまった。


ズキン


アリスと、そして俺の胸に。
きっと今、傷がつき始めている。

だけど、その傷はなくてはいけないものなんだって――

南月と、癪だけど太陽の言葉を聞いて、やっと理解した。


――誰かを想うって、覚悟がいるんだね

――理央って、すごく残酷だよね
――君の優しさは、盾と矛だって言ってんの


そうだよ太陽、俺は残酷なんだ。

誰にでも優しくしてしまって、そしてたった一人以外の人を、何度も傷つけて来た。


――アリスは一生分の傷を負ったからね。これ以上の傷はもう、必要ない


自分でそう言っておきながら、結局、自分自身がアリスを傷つけている。これから話す内容は、アリスにとって……。


だけど、たった一人の子を思うのは、誰かを傷つけないと成立しないって――やっと理解した。