「太陽の事。お母さんにあぁ言われちゃ、気にしないわけにはいかないなって。

それに……クラスメイトが、ニコニコした仮面をつけて教室にいたなんて。俺は知らなかった。

休憩時間にコッソリと教室を抜けて、一人で保健室にいたかと思うと。そんなアイツに気づけなかった自分を、不甲斐なく思うよ」

「理央……」


うん、そうだね。私も、そう思うよ。

太陽くんは、いつだって名前の通り明るくて、人気者だって。信じて疑わなかった。

その笑顔が仮面なんだって、気づけなかった。ずっと同じ教室にいたのに。


「ねぇ理央。これからはさ、」

「――分かってる。けど、その前に」

「?」


理央は、私の顔を上から覗き込む。

そして再び、触れるだけの軽いキスをした。

ちゅっ


「その前に、俺はやらないといけない事があるんだ。だからさ、南月。少しだけ、待っててくれる?」