「だから、今回は日本語をマスターしたし完璧って、そう思ってた。だけど……そう思ってたのは、私だけだった。

理央にはもう好きな人がいて、その好きな人も理央が好きで。私の入る隙は、全然なかった。

その時、気づいたの。

私がやってきた努力は、全部ぜんぶ無意味だったんだって。何年も空回りしてたんだって思ったら、心がズッシリ重くなっちゃった」


アリスちゃんのこの言葉に、太陽くんは頷いた。だけど、それだけ。

彼女に背を向け、再び、彼女の前を歩き始める。


「ちょっと……。あなたが”話したら?”って言ったんじゃん。私、話したわよ。なのにスルーなわけ?」

「根掘り葉掘り聞かれるのも嫌じゃん?それとも、ほじくり返されたい?」


傷の穴を広げて、深くえぐって。
治らない傷跡を、自分につけてもいいんだ?


太陽くんの言葉に、アリスちゃんは閉口した。そして再び俯き、泡が溶けて色の変わった地面を見る。