高瀬君は先に歩いて行った。どんどん先に歩いていく。高瀬君が振り返った。
「黒田さあん、どうしたのお?」
「あ、うん、今行く」
チセはあとからついていった。
高瀬君が振り返る。微笑んできた。
「よかったあ、友達になれて」
と、高瀬君。
「え」
と、チセ。
「黒田さん、かっこいいから」
「え」
「黒田さん、クールでかっこいいと思って」
「え」
「最初の自己紹介のころから気になってたんだあ」
「えええええ」
「さあ、行こう」
高瀬君は先へ行った。後からついていくチセ。
校舎へ入る。高瀬君はチセを見ていた。
「黒田さあん、早く」
チセは急いだ。
玄関。高瀬君は靴箱に靴を入れ、上履きをだした。そうして、はいた。チセも靴箱を開けた。すると手紙が入っていた。はあ、チセはため息をついた。チセは手紙を取った。
「すごおい、ラブレターだ」
と、高瀬君。
「これ罰ゲームで強制的に書かされたんだよ」
「ええええええ」
と、高瀬君。チセは手紙をカバンにしまった。
「わかった。黒田さんはハードルが高いから、最初からひっぱたかれてふられるって前提なんだ」
「え」
「違うのお」
「私にラブレターを書くのが嫌なだけだよ」
「えええええええ」
と、高瀬君。
「なんでえ」
と、高瀬君。
「私にラブレターを書くと、呪われるとかじゃないかなあ」
と、チセ。
「えええええええええ、黒田さんにラブレターを書くと、黒田さんの魔力がいただけるのかあ、ようし、僕も書いてみよう」
と、高瀬君。チセは赤くなった。
「やめて」
と、チセ。
「え、なんで」
「な、なんでって、だって、ラブレターでしょう」
「あ、そうか。うちの学校不純異性交遊禁止だった」
といって、高瀬君は片手を後頭部にやった。
「うん」
「さあ、行こう」
と、高瀬君。高瀬君は廊下に行った。チセも廊下に行った。高瀬君が先に歩いて行く。高瀬君は階段のとこで止まった。チセを見た。高瀬君は微笑んだ。
そうして階段を上っていった。チセも階段を上った。二階まで行き、さらに上った。
三階、廊下。
高瀬君は先のほうを歩いていた。
教室の扉、1年C組、という札。
高瀬君はがらっと、ドアを開けた。
チセはあとから教室に入った。がらがら。ドアを閉めた。
高瀬君の背中が見えた。え。みながこっちを見ている。黒板のとこにチアリーダー部の橋本ここなさんがいた。黒板には相合傘が書かれていて、高瀬帳、黒田チセと書かれている。
え、なにこれ。そして、不純異性交遊禁止と、黒板に書かれていた。
「現在熱愛中のお二人が来たところでえ、はあい、皆さん、注目う」
と、橋本さんがスマホを出した。そこには高瀬君とチセが握手した模様が流れた。
「わあ、僕と黒田さんが握手してるとこ、撮ってくれたんだあ」
と、高瀬君。
「うん」
と、橋本さんは、にっこりと笑った。
「これって、不純異性交遊だと思いまあす」
「え」
と、高瀬君。
え。
「これ、不純異性交遊だと思う人お、手えあげてくださあい」
と、橋本さん。
クラスの大半が手をあげた。
「はあい、不純異性交遊に決定え」
橋本さんはスマホをしまった。
「わが校ではあ、不純異性交遊は禁止のはずでえす」
橋本さんは続けた。
「だからあ、高瀬君と悪魔は退学でえす」
「ええ」
と、高瀬君。
え。
「たあいがく」
と聞こえた。それはよくチセをひやかす男子のグループだった。そのリーダー黒髪短髪の高杉シンが拍手して、「たあいがく」とコールした。そうしてシンのグループの男が「たあいがくっ」と手をたたいてはやした。
それを拍子にクラスメイトたちが「たあいがく」とはやし始めた。
「ごめん、高瀬君、私のせいで、こんなことになって」
と、チセは高瀬君に言った。
「ちょっと待ってよ。不純悪魔族交遊禁止なんて知らなかったんだ」
高瀬君は大声を出した。
「ああ」
と、クラスの女子たち。
「また始まった高瀬君の中二病」
「ほんと高瀬君、あれさえなければ、かっこいいのになあ」
女子たちが口々に言った。
「かっこいいのにい」
「不純悪魔族交遊ってなんだよ」
と、シンが言った。
「不純悪魔族交遊って言ってないわよ。不純異性交遊!」
と、橋本さん。
「違う。僕はただ、黒田さんと握手したら、黒田さんと悪魔族契約できて、ドラグティックアタックが撃てると思ったんだ」
「あああ」
と、女子たち。
「ど、ドラグティックアタックって何よ」
と、橋本さん。
高瀬君は怪訝な顔をした。
「え、知らない?街ひとつ消し飛ばすほどの威力を持った強力な魔法なんだけど」
「そういうこと言ってんじゃないのよ、私が言っているのは高瀬君と悪魔が不純異性交遊したってこと」
「だからあ、黒田さんとお・・・・・・」
「おい高瀬」
と、シンが言った。
「え」
高瀬君はシンを見た。
「おれらからするとさあ、どさくさに紛れて悪魔にセクハラしたように見えんだよな」
「ええ、黒田さんに、ちゃんと同意とったよ、ねえ、黒田さん」
「う、うん」
「おれらには、お前が強引に同意をとったように見えたがな」
と、シン。
「え」
と、高瀬君。
「お前が強引に握手してくれって頼むから。悪魔がやむなく承諾したように見える」
「え、そうなの、黒田さん?」
「え」
チセは考え込んだ。どうなんだろう。ながれというかのりで承諾した。
「ほら、悪魔だって考え込んでる」
「ええええええええ」
と、高瀬君。
「じゃあ、もう一度見てみよう」
と、橋本さんが言った。橋本さんはスマホを出した。スマホには先ほどの動画が流れる。
高瀬君が写っている。「ねえ、黒田さん、握手してもいいかな」チセが「え?」高瀬君「ねえ、黒田さん、握手してもいいかな」チセ「い、いいよ」高瀬「ほんと」、高瀬君が手を差し出している。チセが手を出した。高瀬君がチセの手を握った。高瀬君が手を放した。
「これを見る限りじゃ、お前が強引に同意を取ったようだな」
と、シン。
「ええええええ」
と、高瀬君。
「はあい」
と、橋本さん。
皆が橋本さんに注目した。
「高瀬君と悪魔の不純異性交遊改め、高瀬君の悪魔に対するセクハラに決定」
「え、高瀬君がセクハラ」
女子が言った。
「セクハラだけでもショックなのに、よりにもよってあの悪魔に!」
「ショックう」
女子たちが話している。
「せえくはら」
と、シンが手を打った。次にその男子のグループが「せえくはら」とはやした。続いてクラスの大半が「せえくはら」とはやし始めた。
え、と高瀬君。
私のせいだ、とチセは思った。私が同意したならしたとはっきりするんだった。高瀬君は首をたれていた。そうしてこぶしをぎゅっとした。
「違うんだ」
と、高瀬君が叫んだ。
セクハラコールがぴたっとやんだ。
「違うってなんだよ」
と、シン。
「僕はただ・・・・・・」
「ただ」
と、シンが繰り返す。
「僕はただ、ドラグティックアタックがうちたかっただけなんだ」
「だからさあ、それはあ、悪魔と握手する口実なわけ」
と、シンが言った。
「お前は悪魔に近づくために中二病のキャラつくってんだよ」
と、シンはつづけた。
「えええ」
と、女子たち。
「高瀬君、悪魔にちかづきたかったんだ」
「ショックう」
え、高瀬君は最初から私に近づきたかったんだ、チセは思った。
「違うよ」
と、高瀬君は叫んだ。え、違うんだ、とチセ。
「何が違うんだ。「ねえ、黒田さんてえ悪魔族なのお」」
シンは小ばかにしたように言った。男子のグループがけらけら笑った。
「お前は中二病のキャラを作って、悪魔に近づいたんだ。お前は中二病のキャラを作っているだけなんだ」
シン。
「え」
と、高瀬君。
「すべてお前のお芝居ってわけさ」
と、シン。
高瀬君、私に近づくためにお芝居を。
「違うよ」
と、高瀬君。
「悪魔と話すためなんだ。悪魔と話すためにキャラをつくっているんだ」
そうなんだ、とチセ。
「違うよ」
「高瀬、もうお芝居はやめろ」
とシン。
「幼稚なお芝居だよな」
と、シンのグループの一人が言った。
「高瀬君、もうお芝居はおしまいにしよう」
と、女子が言った。
「お芝居なんかじゃない」
と、高瀬君。
「僕はただ、みんな黒田さんのこと、悪魔っていうし、触ると呪われるんだ、とか言ってるし、黒田さんは地球を滅亡しようとしているんだ、とかいうから、僕は黒田さんに触れたら、すごい魔力がいただけて、ドラグティック・アタックを撃てると、思ったんだ」
皆は顔を見合わせた。チセを皆で悪魔と冷やかしているし、触ると呪われるとか、地球を滅亡させようとしているとか、皆で言いあっていたのは事実だった。
「あ、この件はこれにて終了お」
と、橋本さんが言った。
その声を合図に皆が席につき出した。
「黒田さあん、どうしたのお?」
「あ、うん、今行く」
チセはあとからついていった。
高瀬君が振り返る。微笑んできた。
「よかったあ、友達になれて」
と、高瀬君。
「え」
と、チセ。
「黒田さん、かっこいいから」
「え」
「黒田さん、クールでかっこいいと思って」
「え」
「最初の自己紹介のころから気になってたんだあ」
「えええええ」
「さあ、行こう」
高瀬君は先へ行った。後からついていくチセ。
校舎へ入る。高瀬君はチセを見ていた。
「黒田さあん、早く」
チセは急いだ。
玄関。高瀬君は靴箱に靴を入れ、上履きをだした。そうして、はいた。チセも靴箱を開けた。すると手紙が入っていた。はあ、チセはため息をついた。チセは手紙を取った。
「すごおい、ラブレターだ」
と、高瀬君。
「これ罰ゲームで強制的に書かされたんだよ」
「ええええええ」
と、高瀬君。チセは手紙をカバンにしまった。
「わかった。黒田さんはハードルが高いから、最初からひっぱたかれてふられるって前提なんだ」
「え」
「違うのお」
「私にラブレターを書くのが嫌なだけだよ」
「えええええええ」
と、高瀬君。
「なんでえ」
と、高瀬君。
「私にラブレターを書くと、呪われるとかじゃないかなあ」
と、チセ。
「えええええええええ、黒田さんにラブレターを書くと、黒田さんの魔力がいただけるのかあ、ようし、僕も書いてみよう」
と、高瀬君。チセは赤くなった。
「やめて」
と、チセ。
「え、なんで」
「な、なんでって、だって、ラブレターでしょう」
「あ、そうか。うちの学校不純異性交遊禁止だった」
といって、高瀬君は片手を後頭部にやった。
「うん」
「さあ、行こう」
と、高瀬君。高瀬君は廊下に行った。チセも廊下に行った。高瀬君が先に歩いて行く。高瀬君は階段のとこで止まった。チセを見た。高瀬君は微笑んだ。
そうして階段を上っていった。チセも階段を上った。二階まで行き、さらに上った。
三階、廊下。
高瀬君は先のほうを歩いていた。
教室の扉、1年C組、という札。
高瀬君はがらっと、ドアを開けた。
チセはあとから教室に入った。がらがら。ドアを閉めた。
高瀬君の背中が見えた。え。みながこっちを見ている。黒板のとこにチアリーダー部の橋本ここなさんがいた。黒板には相合傘が書かれていて、高瀬帳、黒田チセと書かれている。
え、なにこれ。そして、不純異性交遊禁止と、黒板に書かれていた。
「現在熱愛中のお二人が来たところでえ、はあい、皆さん、注目う」
と、橋本さんがスマホを出した。そこには高瀬君とチセが握手した模様が流れた。
「わあ、僕と黒田さんが握手してるとこ、撮ってくれたんだあ」
と、高瀬君。
「うん」
と、橋本さんは、にっこりと笑った。
「これって、不純異性交遊だと思いまあす」
「え」
と、高瀬君。
え。
「これ、不純異性交遊だと思う人お、手えあげてくださあい」
と、橋本さん。
クラスの大半が手をあげた。
「はあい、不純異性交遊に決定え」
橋本さんはスマホをしまった。
「わが校ではあ、不純異性交遊は禁止のはずでえす」
橋本さんは続けた。
「だからあ、高瀬君と悪魔は退学でえす」
「ええ」
と、高瀬君。
え。
「たあいがく」
と聞こえた。それはよくチセをひやかす男子のグループだった。そのリーダー黒髪短髪の高杉シンが拍手して、「たあいがく」とコールした。そうしてシンのグループの男が「たあいがくっ」と手をたたいてはやした。
それを拍子にクラスメイトたちが「たあいがく」とはやし始めた。
「ごめん、高瀬君、私のせいで、こんなことになって」
と、チセは高瀬君に言った。
「ちょっと待ってよ。不純悪魔族交遊禁止なんて知らなかったんだ」
高瀬君は大声を出した。
「ああ」
と、クラスの女子たち。
「また始まった高瀬君の中二病」
「ほんと高瀬君、あれさえなければ、かっこいいのになあ」
女子たちが口々に言った。
「かっこいいのにい」
「不純悪魔族交遊ってなんだよ」
と、シンが言った。
「不純悪魔族交遊って言ってないわよ。不純異性交遊!」
と、橋本さん。
「違う。僕はただ、黒田さんと握手したら、黒田さんと悪魔族契約できて、ドラグティックアタックが撃てると思ったんだ」
「あああ」
と、女子たち。
「ど、ドラグティックアタックって何よ」
と、橋本さん。
高瀬君は怪訝な顔をした。
「え、知らない?街ひとつ消し飛ばすほどの威力を持った強力な魔法なんだけど」
「そういうこと言ってんじゃないのよ、私が言っているのは高瀬君と悪魔が不純異性交遊したってこと」
「だからあ、黒田さんとお・・・・・・」
「おい高瀬」
と、シンが言った。
「え」
高瀬君はシンを見た。
「おれらからするとさあ、どさくさに紛れて悪魔にセクハラしたように見えんだよな」
「ええ、黒田さんに、ちゃんと同意とったよ、ねえ、黒田さん」
「う、うん」
「おれらには、お前が強引に同意をとったように見えたがな」
と、シン。
「え」
と、高瀬君。
「お前が強引に握手してくれって頼むから。悪魔がやむなく承諾したように見える」
「え、そうなの、黒田さん?」
「え」
チセは考え込んだ。どうなんだろう。ながれというかのりで承諾した。
「ほら、悪魔だって考え込んでる」
「ええええええええ」
と、高瀬君。
「じゃあ、もう一度見てみよう」
と、橋本さんが言った。橋本さんはスマホを出した。スマホには先ほどの動画が流れる。
高瀬君が写っている。「ねえ、黒田さん、握手してもいいかな」チセが「え?」高瀬君「ねえ、黒田さん、握手してもいいかな」チセ「い、いいよ」高瀬「ほんと」、高瀬君が手を差し出している。チセが手を出した。高瀬君がチセの手を握った。高瀬君が手を放した。
「これを見る限りじゃ、お前が強引に同意を取ったようだな」
と、シン。
「ええええええ」
と、高瀬君。
「はあい」
と、橋本さん。
皆が橋本さんに注目した。
「高瀬君と悪魔の不純異性交遊改め、高瀬君の悪魔に対するセクハラに決定」
「え、高瀬君がセクハラ」
女子が言った。
「セクハラだけでもショックなのに、よりにもよってあの悪魔に!」
「ショックう」
女子たちが話している。
「せえくはら」
と、シンが手を打った。次にその男子のグループが「せえくはら」とはやした。続いてクラスの大半が「せえくはら」とはやし始めた。
え、と高瀬君。
私のせいだ、とチセは思った。私が同意したならしたとはっきりするんだった。高瀬君は首をたれていた。そうしてこぶしをぎゅっとした。
「違うんだ」
と、高瀬君が叫んだ。
セクハラコールがぴたっとやんだ。
「違うってなんだよ」
と、シン。
「僕はただ・・・・・・」
「ただ」
と、シンが繰り返す。
「僕はただ、ドラグティックアタックがうちたかっただけなんだ」
「だからさあ、それはあ、悪魔と握手する口実なわけ」
と、シンが言った。
「お前は悪魔に近づくために中二病のキャラつくってんだよ」
と、シンはつづけた。
「えええ」
と、女子たち。
「高瀬君、悪魔にちかづきたかったんだ」
「ショックう」
え、高瀬君は最初から私に近づきたかったんだ、チセは思った。
「違うよ」
と、高瀬君は叫んだ。え、違うんだ、とチセ。
「何が違うんだ。「ねえ、黒田さんてえ悪魔族なのお」」
シンは小ばかにしたように言った。男子のグループがけらけら笑った。
「お前は中二病のキャラを作って、悪魔に近づいたんだ。お前は中二病のキャラを作っているだけなんだ」
シン。
「え」
と、高瀬君。
「すべてお前のお芝居ってわけさ」
と、シン。
高瀬君、私に近づくためにお芝居を。
「違うよ」
と、高瀬君。
「悪魔と話すためなんだ。悪魔と話すためにキャラをつくっているんだ」
そうなんだ、とチセ。
「違うよ」
「高瀬、もうお芝居はやめろ」
とシン。
「幼稚なお芝居だよな」
と、シンのグループの一人が言った。
「高瀬君、もうお芝居はおしまいにしよう」
と、女子が言った。
「お芝居なんかじゃない」
と、高瀬君。
「僕はただ、みんな黒田さんのこと、悪魔っていうし、触ると呪われるんだ、とか言ってるし、黒田さんは地球を滅亡しようとしているんだ、とかいうから、僕は黒田さんに触れたら、すごい魔力がいただけて、ドラグティック・アタックを撃てると、思ったんだ」
皆は顔を見合わせた。チセを皆で悪魔と冷やかしているし、触ると呪われるとか、地球を滅亡させようとしているとか、皆で言いあっていたのは事実だった。
「あ、この件はこれにて終了お」
と、橋本さんが言った。
その声を合図に皆が席につき出した。