朝都は歩いて行った。二人の男が振り向いた。
 「なんだ、てめえは」
 「ん」
 と、大男。
 「あ、生徒会長」
 と、チセがいった。
 「黒田さん」
 と、朝都。
 「え」
 と、高瀬君。
 「ん」
 「なんだ。てめえは」
 と、大男。
 「生徒会長、あの()つれて逃げて」
 と、高瀬君が叫んだ。
 「なんだよ兄ちゃん、ええ恰好しいだなあ」
 と、男。
 「生徒会長、黒田さん連れて逃げて」
 と、高瀬君。
 朝都はうつむいた。
 「せ、生徒会長、黒田さんつれて逃げて」
 と、高瀬君が叫んだ。
 二人の男が朝都の前にたちはだかった。
 「おい兄ちゃん、あいつの言う通り、あの女の子連れて逃げたらどうだ」
 朝都は目をつむった。
 「そうだな」
 と、朝都。
 二人の男はほくそ笑んだ。
 「なあんだ。物分かりいいじゃねえか」
 朝都は進んだ。大男が見てきた。
 朝都は大男の高瀬君がひっつかんでいる腕を握った。
 二人の男は動揺した。
 「え、生徒会長、黒田さんつれて・・・・・・」
 と、高瀬君。
 「そこに弱ってるやつがいるのに、逃げてられっかよ」
 と、朝都。
 「あ、いや、だから、黒田さんを」
 と、高瀬君。
 瞬間、何かが起こった。朝都は男の手をつかんだ手を放した。男は「うわ」といって高瀬君から手を放した。どさっ。高瀬君は地面に尻もちをついた。
 「あ、いた」
 男は腕を見た。
 「う、しびれる。そういうことか。お前もか」
 「ああそうだよ」
 と、朝都。
 男は振り向いた。そこには男の部下の二人の男がいた。
 「おい、離れろ」
 と、男。
 「は」
 と、朝都。
 「おい、高瀬帳といったな、黒田さん連れて、離れろ」
 と、朝都。
 「え」
 と、高瀬君。
 チセは何かを感じた。
 「高瀬君、行こう」
 と、チセ。
 「え」
 と、高瀬君。
 「いいから行くんだ」
 高瀬君は立ち上がった。そうしてチセと一緒に後ろの方へ下がった。