「まずはステロイド投与、それで改善を認めなければ『高圧酸素療法』と言う治療を行います」


淡々と説明をしているドクターの話を、かろうじて聞こえている右耳だけで聞く。

ステロイド投与は、血流障害によって起こる細胞のむくみや炎症を抑える効果がある。
それに対して、高圧酸素療法とは医療用の酸素カプセルなどに入り、高濃度の酸素を吸入して血流をよくする治療法だ。


「どちらの治療法でも、後遺症が残ってしまう可能性があります。 大丈夫ですか?」

「はい……大丈夫です」

「不安だとは思いますが、まだお若いので、症状改善も早いと思いますよ」


場の空気を和らげるためなのか、前向きな言葉で励ましてくれるドクター。

一通り説明を終えたドクターから治療法についてのパンフレットと、入院についてのパンフレットをもらうと、病棟の迎えを待った。

しばらくすると病棟の看護師が外来の待合室まで俺を迎えに来てくれ、指示された部屋に荷物を運び入れる。
最初の段階で個室希望と伝えてあったため、そこへと案内された。


「今日から遠山くんを担当する深山(みやま)です。 よろしく」

「どうも……」

「困ったことがあったら、なんでも言って」


見た感じ、30代前半といった感じだろうか。
〝深山〟と名乗る女性看護師は、手慣れた様子で、身の回りの整頓をしてくれている。