梅沢先生が私以外に会っている女性がいる真実を知った今、女として引き下がるわけにはいかなかった。

だって、先に出会ったのは私。
奥さんも子どももいることは知っていても、梅沢先生を信じたい。

今は、そう思うしかなかった。


* * *

「……さん。 井筒さん!」

「……はっ! はい!?」

「ちょっと、大丈夫?」


横にいたリハビリの先生に名前を呼ばれ、ふと我に返る。

……や、やばい。 今は先日とは別の患者さんの介護認定調査中だった。
別のことを考ていて、仕事にまったく集中できない。

昨日、友希に話を聞いてもらって気持ちは落ち着いたものの、朝からこんな調子だ。
今朝も、退院する患者さんの退院支援をまとめるのをすっかり忘れていて、奈部さんに迷惑を掛けてしまった。

頭の中ではしないといけないことはわかっていても、身体がついていかない。

考えていることはもちろん梅沢先生との今後のことで、どう付き合っていくべきなのか迷っていたのだ。


「大丈夫? 顔色悪いよ? ちょっと、休んだ方がいいんじゃないの?」

「い、いえ! 大丈夫です。 すみません」


心配してくれたリハビリの先生をなんとか説得し、とりあえず介護調査は無事終了。
とはいえ、今のままだと非常にまずい。

地域連携室に戻って書類をデスクに置くと、休憩室に向かった。