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学校の脇道。

登校中の生徒が同じ方向に歩いている。

トコトコと歩く葉緩の隣で身体をくねらせ、滑り進む白蛇がいた。

この蛇は葉緩以外に見られることはない。

やがて生徒が学校の中に入っていき、葉緩は人気のなくなった道で立ち止まる。

白蛇は一鳴きすると、煙幕を出して姿を変貌させる。


「葉緩、もう少し時間には敏感になってもらいたいのだか」


現れたのは、白銀のうねった髪をした女性である。

瞳孔の鋭い金色に、身体に鱗模様がついている。

毛先が朱で染まっていた。


葉緩だけに見える不思議な蛇、白夜である。

気づいたら傍にいるようになった相棒のような存在だ。


「なーにを言いますか! そこは白夜さん頼みますよー!」

「忍も落ちたものだ。ワシの本来の役目はこのようなものでは……」

「あっ! 主様だ! 白夜、戻って!」

「……はいはい」


たとえ人には見えなくても白夜がいるという認識が阻害する。

しゅるりと蛇に戻った白夜は身体をうねらせて草木の中に隠れていった。



「よし……忍法・隠れ身の術!」


得意の隠れ身で学校と外を隔てる壁に隠れる。


「それではこっそりと主様をお見守りいたします!」


周りの景色に紛れるのは慣れている。

登校中の生徒が誰も気づかない。

完璧な忍術に葉緩は誇らしい気持ちになりながら登校する主・桐哉の観察に努めた。


「桐哉くーん、おっはよー!」


駆け寄ってくるのは金色のツインテールをしたハートをまき散らす進藤 クレアだ。

帰国子女の豪華絢爛女、厚顔無恥にも程があると認識していた。

厚かましくも桐哉の腕に抱きつき、上目遣いに微笑んでいる。