「もう何なのよ急に!
びっくりするじゃない!!」

私は大地を睨み付けながら首もとをさする。

「俺も道端で急に叫びだした女を見つけてびっくりしたんだけど」

そう言ってニヤリと頬笑む大地に
あの光景を見られていたのかと顔が赤面する。

大地は思い出したように
クツクツと笑っている。

くっそ~、こいつ笑いのネタにする気だな...
そうはいかないわよ...

「私は会社でご飯済ませてきたから
1人で食べに行けばいいでしょ!」

依子はプイッと顔を背けた。

「さっき分かったって言っただろ?」

「気が変わったの!!」

「俺の奢りだけど?」

「奢り...?」

大地の言葉に依子の耳がピクリと動く。

「奢り。好きなだけ食べて飲んでOK」

「じゃあ行く!!」

急に笑顔で歩き出す依子に
「現金なやつだな...」
大地はフッと噴き出しながらも
依子の後について歩き出した。

「大地早くっ!飲む時間少なくなっちゃう」

急ぎ足で前を歩く依子は
後ろを振り返ると早く歩けと手招きしている。

「どんだけ呑みたいんだよ?」

大地は駆け出すと依子の隣に並んだ。

「当たり前じゃない、
大地と違って私は少ない給料で
遣り繰りしてるんだから
こんなチャンス滅多にないわ。」

あっ...こんなこと言ってたらまた
大地にケチとかバカにされそう...

依子はチラッと大地の顔色を伺うが
「好きなだけ飲めばいい」
と機嫌良さげに隣を歩いているだけだ。

「本当に奢りよね...?
後から割り勘なんて言わないでよ?」

いつになく優しい大地に何か裏があるのでは...?と疑ってしまう。