でも、自分の恋心を確信したのは
きっとあの時だろう...

僕はいつものように手土産を持って依子さんの勤めている事務所へと向かった。

「こんにちは〜」

事務所の扉を開けるといつも何人か机に座っているのにその日は机で作業しているのは依子さん一人だった。

そして、案の定、依子さんは僕の存在に気づいておらず、パソコンにかじりついたままだ。

もう一度、声を掛けようと口を開いたとき
依子さんはう〜んと思い切り伸びをしながら
大きな口を開けてあくびをした。

その時、パチッと僕と目が合い、
僕に気付いた依子さんは「あっ、安斉さん!!」慌てて席を立った。

「こんにちは」

真っ赤な顔を向ける依子さんに
僕は何も見てないですよと言うように
いつも通りニコリと微笑んだ。


「すみません、気付かなくて、、
今日はうちの事務所、創立記念日で
休みなんですけど、どうしたんですか?」


「えっ?!お休みだったんですか?
でも、依子さんは?」


「私は任されてる仕事の締め切りが近いので休日返上です. . .うちの部長から聞いてなかったですか?」


「うん。その部長から、今日にしてほしいと先日メールが入ってたんだけど...」

僕は困ったように呟いた。

すると依子さんは
“あんの、波平っ(怒)”
とボソリと小さく呟いた。

依子さん、心の声が漏れてるよ. . .

にしても、波平って、、似てるけど(笑)

「大丈夫ですよ。
また日を改めて伺いますんで」

僕は笑いを堪えながら言った。