Side依子

大地との別れから、3週間が経とうとしていた。その間、大地が私以上に苦しい思いをしているだなんて知るよしもない私はいつも以上に仕事に励んでいた。

仕事している間は寂しさを紛らわすことができる。これほど残業や休日出勤が有り難いと思ったことがあっただろうか。

それでも、30歳を超えると長時間のデスクワークは身体に堪える。
私は凝り固まった身体を解すように
座ったまま、片方の腕をグルグルと回し始めた。


すると、「依子さんお疲れ様です」と
後ろから安斉さんの声が聞こえて振り返る。


「あっ、安斉さん、お疲れ様です。」

私は気まずさを表情に出さないように
挨拶を返した。

安斉さんには“寂しいときは頼ってほしい”と
言われたものの、私は安斉さんに甘えるなんてことはできないでいた。

安斉さんからはメールが何度か届いたが
当たり障りない返事を返す程度だった。