狂愛メランコリー


 そうでなければ、わざわざ行動を変える必要なんてない。

 理人も同じなのかもしれない。
 あの救いようのない結末を、変えたいと思っている?

「……サイコ説は薄くなったな」

 向坂くんがメロンパンを頬張りつつ言った。

「じゃあ、何のために────」

 どうして、わたしは理人に殺されるのだろう。
 結局、いつもそこで行き詰まった。

「……なあ、おまえと三澄って何なんだ?」

 ふと向坂くんが頬杖をついた。

「わたしと、理人……?」



 ────初めて出会ったのは、小学校に上がった頃。
 いまと同じように、理人は学校の人気者だった。

 幼いながら、みんな彼の魅力に気がついていた。
 その整った顔立ちは当時から人目を引いたし、子どもっぽさが全然なくて、性格も大人びたものだった。

 女の子にも男の子にも紳士的で優しくて、勉強も運動も何でもできた。
 完璧なのは、当時から変わらない。

 そのときも誰かが言っていたのを覚えている。
 童話の中の王子さまみたい、って。

 最初はわたしも彼と接点なんてなくて、たまに廊下ですれ違えば勝手に見つめていたくらいだ。

 もちろん恋心なんかじゃなくて、純粋な興味からだったと思う。

 いつもみんなに囲まれて穏やかに微笑んでいる“王子さま”は、いったいどんな人なんだろう?

 ────そんな彼と親しくなるきっかけは、思わぬところで訪れた。

 放課後、花壇に水やりをする理人を見かけたのだ。

 珍しく取り巻きもいなくて、つい校門へ向かう足を止めてしまった。

「……お花、すきなの?」

 彩る花々を眺める彼の横顔があまりにも綺麗で、気づいたら声をかけていた。

 幻想的で、寂しそうに見えた。

「きみ、は……」

 突然のことに驚いたように、彼は目を見張って振り向いた。

 ランドセルを背負い直して理人に歩み寄る。

 いまのわたしじゃ考えられないほど、そのときの方がずっと、強くて行動的だった。

「いいにおい。このお花、なんていうの?」