狂愛メランコリー


「死ぬ気で頑張ってきただろ、これまで。おまえがそれを否定すんなよ」

 繰り返した3日間と、繰り返した今日の記憶が、走馬灯のように流れてきた。

 何度も殺され、何度も死んだ。
 味わった痛みも苦しみも、ぜんぶ乗り越えてここにいる。

(諦めたくない……)

 向坂くんと過ごせる、笑い合える未来があるのなら、精一杯手を伸ばしたい。

 また、死を繰り返すことになったとしても。
 今度はもう絶望なんてしない。

 一緒に運命に抗おうとしてくれる向坂くんがいる。
 記憶をなくしても、いつだって味方でいてくれる蒼くんがいる。

(理人だって……)

 自分よりわたしを優先して、この一歩を踏み出したんだ。

 これから先の未来をすべて託して、最後まで想いを貫いて。
 それをぜんぶ、わたしが投げ出していいはずがない。

「なあ、おまえはどうしたいんだよ」

 その言葉を聞いて、気づけば口をついていた。

「……死にたく、ない」

 当たり前に“明日”が来る日常を信じたい。

「わたしがそう思ってもいいのかな……?」

 死に追われているわたしが、それを願ってもいいのかな。

 周りにいる人すべての運命まで狂わせてしまうかもしれないのに。

「当たり前だろ。生きててくれよ、頼むから」

 唇を噛み締めた。
 そうしないと、涙がこぼれてしまいそうだった。

 足元から風が吹いてくる。
 急速に恐怖心が湧いて、心臓が冷えた。

 落ちたら死んでしまう。
 そんな当たり前の事実に、足がすくむ。

 死にたくない。
 生きていたい。
 心から強くそう思った。

「ありがとう、向坂く────」

 噛み締めるように告げる。
 その瞬間、向坂くんの身体が宙に投げ出された。

(え……?)

 唐突な出来事についていけない。
 何が起きたのか分からない。

 やがて、落ちていった彼の身体がコンクリートに叩きつけられる。

「……っ!」

 恐る恐る身を乗り出し、真下を見下ろす────。

 微動だにしない向坂くんの頭の下に、みるみる赤い血溜まりが広がっていく。

 目覚めるような鮮やかな色に、やっと我に返った。
 愕然として膝から力が抜け、その場に崩れ落ちる。

「いや……っ!」

 思わずあとずさり、上げた悲鳴は掠れた。
 肌があわ立ち、浅い呼吸を繰り返す。

(何が、起きたの……?)