狂愛メランコリー


 ────わずかな沈黙が落ちた。
 心電図モニターの規則正しい音だけが響いている。

「……あのさ」

 ふと、彼が口を開いた。

「橋の上でおまえが言ってたこと、だけど」

 どくん、と心臓が跳ねた。
 痺れるほど鼓動が加速する。

『わたし、向坂くんが好き』

 みなまで言われなくても、その告白のことだと察しがついた。
 かぁ、と頬が熱を帯びていく。

 いま考えると、あんなふうにはっきりと思いの丈を伝えられたことに驚きを隠せない。

 向坂くんはどう受け止めてくれたんだろう。
 聞きたいような、聞きたくないような。

 思わず緊張してしまいながら、わたしは「うん」と頷いて続きを待った。

「俺────」

 そのとき、図らずも彼の言葉を遮るように扉がノックされた。
 はっとして、ふたりしてそちらを見やる。

「……どーぞ」

 彼がいつものように気だるげに返事をした。

 高まった緊張を追いやるように、わたしは小さく息をつく。

 スライドして開いた扉から顔を覗かせたのは、蒼くんだった。

 申し訳なさそうな表情を浮かべたまま遠慮がちに入ってくると、一歩、二歩、とためらうような足取りで進んでから止まる。

「本当にごめん、仁くん!」

 ばっ、と頭を下げる彼を、向坂くんは意外そうに見つめた。

「……別に謝んなくていいって。自業自得だし」

「そんなこと」

「俺がそういう態度とってきたんだよ。おまえらに誤解されるように」

 どこか寂しげな眼差しで宙を眺める向坂くん。

 そろそろと頭をもたげた蒼くんは、その言葉の意味を推し量るように視線を彷徨わせる。
 言葉を探しているみたいだった。

(そっか)

 やっぱり、蒼くんは橋の上での会話を聞いていない。
 向坂くんの真意を知らない。

 ただ、それでも向坂くんから殺意を感じられないのは確かなようで、だからこそその態度に戸惑っていた。

「……警察はどうなったの?」

 ループに関する諸々の真相はあとで伝えておくことにして、わたしは別のことを尋ねた。

「あ、えっと……」

 言い淀んだ彼は、少し迷ってから口を開く。