これがきっと、最後の機会なのだろう。
蒼くんを信じるかどうか、ループに巻き込むかどうかを決めるための。
本音を言えば、もう一度その手を借りたい。
いま頼れるのは、彼しかいない。
けれど、ループに巻き込むということは少なからず蒼くんの運命も変えてしまうことになる。
それに、もしループが終わったとしても、向坂くんみたいに豹変しないとは限らない。
死が身近になったせいで向坂くんの猟奇性が目覚めたのだとしたら、蒼くんにだって同じリスクはある。
(でも……)
『だから俺もできることをしたいだけ。答えになってるか分かんないけど、それだけだよ』
あの言葉が本心なら────。
「蒼くん……」
わたしはそっと振り向いて、その手を握った。
「助けて」
彼を信じる。
それ以外の選択肢なんてない。
以前と同じように裏庭へ出ると、何もかもを包み隠さず伝えた。
当たり前だけれど、蒼くんはかなり衝撃を受けたようだった。
「死に返るループ……」
だけど、真に迫るわたしの様子に気圧されたのか、すべてを事実として受け入れてくれたみたいだ。
記憶を失わないためには自殺が必要だということまで話せば、彼は心底困惑したように眉を寄せる。
「じゃあ俺、何で“昨日”……」
蒼くんの声は揺らいでいた。
「……ごめん、菜乃ちゃん。本当にごめんね」
「あ、謝らないで。蒼くんは何も悪くないよ」
そもそもわたしが自殺を強要する権利なんてないし、そんなことするはずもない。
「でも」
「……仕方ないよ。“昨日”は会えなかったから」
逆の立場だったら、きっとわたしも同じ選択をする。
相手を救うための自殺を受け入れられるのは、巻き戻るという前提があるからだ。
“昨日”の蒼くんは、わたしや向坂くんの生死が分からなかった。知りようがなかった。
もしループが終わっていたら、自殺は本当の死を意味する。
そんな不確かな状況では、誰でも絶対に怖気づく。



