狂愛メランコリー




 ひとけのない裏庭に場所を変え、蒼くんにループについてひと通り説明する。

 理人に殺されていたことまで話せば、彼はかなり衝撃を受けたようだった。

 人ひとり分空けて、わたしたちは花壇を囲むレンガに腰を下ろしていた。

 緩やかに風が吹き抜ける。

「理人くんが亡くなったことで、ループは一度終わったんだ?」

「……うん」

「でも今度はそれまで助けてくれてた仁くんに殺される、と」

「そう……」

 確かめるみたいに言う彼に、うつむきながら頷く。

「だったら、今回も同じだろうね」

 彼が悩ましげに顎に手を当てながら言う。
 その割にさっぱりとした口調だった。

「菜乃ちゃんか仁くんか、どっちかが死なない限りループは終わらない」

 鉛のような衝撃が落ちてくる。

 そのことを、一度も考えなかったわけじゃなかった。
 薄々気づいてはいたけれど、ずっと目を逸らし続けていただけだ。

 そんなの、選べるわけがない。

「とはいえ、答えはもう決まってるよね。殺人鬼の仁くんのために菜乃ちゃんが死ぬ義理なんてないし、それなら────」

「やめて……!」

 つい、叫ぶように遮った。

 蒼くんは驚いて目を見張り、反射的に口をつぐむ。
 その先に何を言おうとしたのかは想像に易い。

 わずかな沈黙を経て、彼がわたしに向き直った。
 瞳の奥を覗き込むように顔を傾ける。

「……もしかして」

 気づかれた、と悟った。
 どのみち向坂くんへの恋心はいつか話さなきゃならない。

 けれど、彼はそこで言葉を切ると、緩やかに視線を逸らした。

「いや……やっぱいい」

 聞かれれば正直に認めるつもりでいたけれど、そう引き下がられると自分からは言いづらくなる。

 いずれにしても、本筋はそこじゃない。

「……わたし、どうして覚えていられたのかな」

 “昨日”とその前のこと────階段から落ちて死んだこと、屋上から飛び降りて死んだこと。

 今度は何が、記憶を保つのに必要なアイテムなのだろう。