ふと控えめに呼びかけられて顔を上げる。
「しんどかったら無理しないでよ。俺でよかったら何でも聞くし」
そんな言葉が、いまは素直に嬉しかった。
状況に変わりはないけれど、寄り添ってくれる人がいるだけで心強い。
「ありがとう」
小さく笑って告げた。
笑うことができるなんて思わなかった。
4限終わりのチャイムが鳴り、昼休みを迎えた。
いまのところ何とか生き延び、命を繋ぐことができている。
わたしはなるべくひとりになりたくなくて、教室を出ないようにしていた。
いつ向坂くんが乗り込んでくるかと怯えていたけれど、意外にも動きはない。
(余裕の表れかな……?)
わたしなんていつでも殺せる、とせせら笑っているのかもしれない。
ずき、と頭痛がした。
目覚めたときから続く頭痛や倦怠感は、未だにおさまる気配がなかった。
気のせいでも幻でもないのだと認めるほかない。
すっかり食欲をなくし、そっと箸を置く。
「…………」
じわじわと這い上がってきた冷たい不安感が、まとわりついて離れない。
もしかすると、死を繰り返しすぎて身体が限界に近づいているのかもしれない────。
死んでも時間が巻き戻るから、ループする間は、わたしの命は実質無限だと思っていた。
けれど、実際には着実に寿命が削られている。
いつかそのうち、目覚められなくなるような気がする。
本当に死んでしまうかもしれない。
(……時間がない)
早く何とかしなきゃ。
ループにも命にも、リミットがある。
時間切れになる前に、救いようのない結末を変えるしかない。
放課後、逃げるように教室を出ていち早く昇降口へ向かった。
向坂くんに見つからないうちに学校を出ないと。
周囲を警戒しつつ、最後の階段を下りる。
「!」
床に足をついた途端、死角から人影が現れて息をのむ。



