狂愛メランコリー


「痛た……」

 顔をしかめつつ、頭を抱えた。
 ひどい頭痛がしている。

 記憶が見せる幻かと思ったのに一向におさまらず、気のせいでは片付けられないくらいだ。

 でも、このまま寝ているわけにもいかない。

 どんな手を使っても彼が殺しにくるとしたら、家を特定されるとまずい。

 重たい身体を引きずるように準備をすると、早めに学校へ向かった。



 屋上前の階段に向坂くんがいることは分かっている。
 そこへは近づけない。

 どうせ“昨日”みたいになってしまうから、ミルクティーを買いには行かなかった。

 教室に入ると、すぐに自分の席につく。

 ────納得できるかどうかは別として、向坂くんに殺される理由はさっき考えた通りだと一旦仮定しておこう。

 けれど、どうしてループするのだろう?

 理人のときのように、最初の死に際でわたしが“やり直したい”と願ったのだろうか。

(……やり直す?)

 いったい何をどうやり直せば、この結末を変えられるというのだろう。

 関係性や選択に分岐点があった理人のときとはちがう。

(分かんない……)

 既に行き詰まった気分だ。
 答えはおろか、たどるべき道筋すら見えない。

「大丈夫?」

 ふいに降ってきた声に顔を上げる。

 そこには、心配そうな優しい表情を浮かべた蒼くんが立っていた。

「あ、えと……」

「大丈夫なわけないか。急に理人くんがあんなことになっちゃって」

 返答を待たずして、彼は言いながら空いている前の席に腰を下ろした。
 そのまま振り向き、わたしの机に頬杖をつく。

「あんまり眠れてないんじゃない? 顔色悪いよ」

 そう言われて思わず頬に手を添えると、ふと昇降口でのことがよぎった。

 今日のわたしが消沈しているのは理人が原因ではなかったけれど、何にしても気にかけてくれるのはありがたいことだった。

「……昨日はありがとう、蒼くん」

「ん、昨日? 何かしたっけ?」

 きょとんと彼が首を傾げる。

(……あ、そっか)

 昨日、ではなかった。
 またループの中に閉じ込められたのだった。

 時間が巻き戻ったから、わたしや向坂くん以外は“前回”のことを覚えていない。