わたしが殺され続けるループは、終わっていなかった。
いや、一度は確かに終わったはずだけれど、再び始まっていたのだ。
『今度はどうやって殺して欲しい?』
向坂くんの口ぶりからして、殺されたのは“昨日”が初めてじゃない。
記憶を失っただけで、きっと既に何度も殺されている。
今度は、向坂くんに殺される1日がループするんだ。
(そんなの────)
嫌だ。
到底信じられない。信じたくない。
きつく唇を噛み締めた。
理人に殺される日々を繰り返していた頃から、向坂くんはずっと味方でいてくれた。
死に返るループなんて突飛な話をしてもいつも信じてくれたし、諦めそうになるわたしを支えてくれた。
いつだって、優しさと勇気と自信をくれた。
それなのにどうして、よりにもよって向坂くんに殺されるのだろう。
『どうなるかな。間欠泉みたいに血が出たら面白ぇな』
もしかしたら、いままでずっと気づかなかっただけで、向坂くんはもともとそういう異常性を持ち合わせた人物だったのかもしれない。
猟奇的な本性から、快楽殺人を好むようなサイコパス。
にわかには信じられないけれど、現状が物語っている。
だったら、わたしが殺されるのは彼のエゴのため?
残虐な欲求を満たすためだけに、永遠に殺され続けるの……?
気が遠くなるような思いがした。
閉じ込められたこの世界には、もう頼れる人は誰もいない。
────記憶も、法則を知っている向坂くんが相手じゃ保証されない。
自分の記憶は、この世界で唯一信じられる指標になるのに。
今回覚えていられたのは奇跡と言える。
(……でも)
今日また彼に殺されて腕時計を奪われたら、“明日”のわたしは何も知らないまま向坂くんに会いにいって────また、裏切られるように殺されるんだ。



