狂愛メランコリー


 ────お通夜の日、久しぶりに会った理人の伯母さんは、会うなりわたしを抱き締めた。

 悲しみをこらえたような震える息遣い。
 わたしは我慢できずに涙をこぼしてしまった。

 昔の記憶が一気に蘇ってきたのだ。
 懐かしくて、愛しくて、けれど二度と戻ることのない日々の思い出。

『来てくれてありがとう、菜乃ちゃん』

 昔と変わらない伯母さんの優しい声と言葉に、いっそう胸を締めつけられた。

『……昔、あなたのお陰で理人は笑うようになったの。ひとりぼっちじゃなくなった』

 心が震えた。
 何もできないだめだめなわたしでも、彼の笑顔を取り戻すことだけは、できていたのかもしれない。

 再び奪おうとしたのも、わたしだったけれど。

『……また、遊びにいきます』

 スイートピーの咲く頃に。
 そう言うと、伯母さんは腕をほどいてわたしを見た。

『理人と約束したんです。ずっとそばにいる、って』

 不思議と涙はおさまっていた。

 小さく笑んで見せると、指先で目元を拭った伯母さんもふんわりと優しく微笑み返してくれた。

『ええ、待ってる』

 昔と変わらないノスタルジックな欠片は、理人を取り巻いた至るところに散りばめられていた。

 彼がいなくても世界は廻っていく。
 けれど、彼の存在した証はそこらじゅうにあふれていた。

 繰り返した3日間が幻じゃなかったことも、わたしや向坂くんの記憶が証明している。

 紆余曲折(うよきょくせつ)を経て、こじれた世界を駆け抜けて、たどり着いた結末はあまりにも残酷だった。
 望んだ“最後”じゃなかった。

 それでも、理人が遺してくれた未来をまた、駆け抜けていくしかない。



 学校へ行く前にコンビニに寄って、ペットボトルのミルクティーを買った。

 昇降口で靴を履き替え、階段を上っていく。
 屋上前に着くと、そこには変わらず向坂くんがいた。

「……よ」

「おはよう、向坂くん」