狂愛メランコリー


 気持ちをないがしろにしていたのは、理人じゃなくてわたしの方だった。

 なんて傲慢(ごうまん)だったのだろう。
 彼なら分かってくれる、受け入れてくれる、なんて、勝手にわたしが押しつけていただけだ。

 理人の想いもすべて無視して、自分を優先した。

「僕が菜乃を好きなのは本当なんだ。でも、うまく伝えられなくて、いつも傷つけては殺しちゃって」

「理人……」

「我に返ったときにはいつも、目の前で菜乃が死んでる。自分の手が汚れてる。……何度も何度も、繰り返すたびに後悔した」

 彼の息が震えて、わたしは唇を噛み締める。

「ごめん」

 絞り出すように告げられ、首を左右に振った。

「謝るのはわたしだよ……。本当にごめんなさい」

 こらえきれずにこぼれた涙が、つと頬を伝っていく。

「わたし、理人のこと全然考えてなかった。理人の優しさが当たり前になってて、いつも自分のことばっかり……」

 先に裏切ったのはわたしだった。

 だから、怒って、悲しんで、失望した彼は、わたしに手をかけたんだ。

 もちろん、善悪で言えば彼の行動は悪だし正しいとは言えない。

 けれど、理屈では割りきれない事情や感情があって、それがわたしたちの歯車を狂わせたんだ。

(わたしのせいだ……)

 理人が変わってしまったわけじゃなかった。
 むしろ昔と何も変わっていないからこそ、過去に縋って誰より囚われていた。

 きっと、理人にとっても“やり直し”の機会になっていたのだと思う。

 わたしが彼の思い通りに彼だけを見ていたのなら、殺す選択肢なんてそもそも生まれなかったのだから。

 だから余計、躍起になっていたんだ。
 わたしを自分に依存させようと────。

(でも、いつもうまくいかなかった)

 わたしだけじゃなく、理人も。
 結末を変えようとしても、どうにもならなかった。