狂愛メランコリー


 この繰り返す3日間の中で、出会ったのが向坂くんじゃなかったら、きっととっくに折れていた。

 彼がいてくれたから、諦めることなく現実と向き合えた。

「何だよ、急に……」

「ありがとう」

 戸惑いをあらわにする向坂くんに、心からの礼を告げる。

 本当はこの思いの丈も伝えてしまいたかったけれど、これ以上の迷惑はかけられない。

「本当に、ありがとう」

 つい惜しむようにもう一度口にすると、声が震えてしまった。

 泣きそうだ。
 喉の奥が締めつけられる。

「……おまえ、まさか────」

 はっと慌てたような彼の視線から逃れ、わたしはきびすを返した。

「おい、待てよ。花宮!」

 引き止める声にも振り向かず、階段を駆け下りていく。

 本鈴が鳴った。
 夢の終わりを告げる深夜の鐘みたいだ。

 魔法が解けて、名残惜しさと虚無感だけが残る。

(……ごめんね、向坂くん)

 わたしのために色々と考えて動いてくれていたのに、結局は無に()すような選択をしてしまうことを、どうか許して欲しい。

 これで決心がついた。
 自分の結末を、もう迷ったりしない。

(わたしは────)

 理人に殺される。
 今度はちゃんと、殺されよう。



 昼休みになると、わたしはひとり裏庭へ出た。

 ひとけのないところだけれど、端に並ぶ花壇が綺麗なのだ。

 風に揺れる花々を見ていると、小学校の頃を思い出す。
 理人と出会った放課後のこと────。

 ふと気配を感じて振り返ると、渡り廊下に彼が立っていた。

「……理人なら、見つけてくれると思った」

 そう言って微笑みかける。
 いつでも、どこにいても、わたしを一番に思ってくれていた彼なら。

「菜乃……」

 理人はどこかためらいがちに歩み寄ってきた。
 かなり余裕がなさそうだ。

(当然だよね)

 わたしが彼の立場だったら、恐らくもっと冷静ではいられないはず。

 隣に立った理人を見上げると、その手を取ってわたしの首にあてがった。

「理人。わたしを殺していいよ」