痛い。苦しい。息が出来ない。

 思い切り息を吸おうとしても、隙間風のように震える呼吸と呻き声が漏れるばかりだ。

「……っ」

 視界は涙で滲み、すべての輪郭がぼやける。

 “彼”の両手が私の首を強く締め上げている。

(なん、で……)

 どうして私、殺されるの?
 どうして、彼が?

 靄のかかった頭では、もう何も考えられない。

「大丈夫。すぐ楽になるよ」

 彼は慈しむように優しく微笑んだ。

 すぅ、と視界の端が黒く染まっていく。

(やだ……。嫌だ、死にたくない)

 戻りたい。時間を巻き戻せたらいいのに。

 やり直したい。

 彼に殺されないように────。

「“次”は失敗しないから」

 だんだん気が遠くなる中、彼がそう言ったのがぼんやりと聞こえた。

 次……?

 身体から力が抜ける。ふっと目を閉じる。

 彼の言葉の意味も分からないまま、私は意識を手放した。