だって、脳内がぐちゃぐちゃなんです。
何を話せばいいかなんて、考えられないんです。
大雨の中。
一つの傘の下。
黒岩くんに抱きしめられているこの状況。
まるで狭い密室。
私たち二人だけの夢の世界に、紛れ込んじゃったみたい。
甘々なシチュエーションすぎて、私の意識が飛びそうになってしまいます。
私を抱きしめていた腕をほどいた、黒岩くん。
傘を反対の手に持ち替えている。
今がチャンス!
黒岩くんから離れよう!
胸キュン過呼吸になって、バタッと倒れちゃう前に!
そう思って離れてみました。
後ろにザザザって。
3歩くらい。
でもでも、すぐに後悔しちゃった。
見上げると、傘はなぜか私の頭の上にあって
「離れたら、俺が濡れるんだけど」
「ごごご、ごめんなさい」
私は慌てて、黒岩君のそばに戻る。
今は抱きしめられていない。
でも恥ずかしすぎ。
だって見上げると、黒岩くんの大人っぽい綺麗顔があって。
こぶし1個分くらいしか離れていなくて。
あいあい傘で、見つめ合っている状態だし。
うわぁぁぁぁ……オロオロしちゃうよ。
これって、カップルの距離感だよね?
かかとを上げたら、チュってしちゃいそうなほど近いなんて。
……キキキ……キス?
なんて極甘な妄想をしちゃったんだろう。
ヤバい、息上がっちゃう。
バクバクで心臓が押しつぶされそうだよぉぉぉ。
明らかに、てんぱっている私。
瞳をキョロキョロ泳がせていたんだけど、ある一点に視点が定まっちゃった。



