「おっ……お願いします……」
戸惑いながら、私は視線を床に逃がす。
お互い無言。
夏希ちゃんも私も、全く口を開かない。
その間に私の長い髪が、左右でハートに編み込まれ。
首の後ろで、上品にまとめ上げられていく。
普段、全くメイクをしない私。
アイライナーとマスカラで、こんなに瞳が大きく見えちゃうんだ。
つい鏡の中の自分に見入ってしまうのは、別人にしかみえないから。
真剣な顔で私の唇にリップブラシを走らせる夏希ちゃんは、私の口元が桜色に色づいたのを確認すると
「まさか、ここまで大人っぽいくなるとはね」
コクコク頷きはじめた。
セリフだけを取ると、嫌味に思えるかもしれない。
でも夏希ちゃんはうっすら微笑んでいて、私への敵意は一切見受けられない。



