部屋に閉じこもる私に、ドアの向こうからお父さんが言ってくれたんだ。



『母さんが死んじゃってから、由乃に家事を全部やらせてきたことを反省したんだ。これからは父さんも家事をするから』って。



お父さんも弟も、『学校に行け』なんて私に言わない。


『部屋に閉じこもっている理由を話せ』とも言わない。



たまに私の部屋の前に現れて、ほろっと弱々しい声をこぼしていく。



『父さんは高校の頃、好き放題遊んでた。それなのに由乃には……本当にごめん……』とか。



30分くらい前には、珍しく弟がドアにボソボソ声を吹きかけてた。


なんて言ってたんだっけ?


確か……



『弁当置いとくから……ナスと鶏肉のみぞれ和え……』



って。



……ん?



ナスと鶏肉のみぞれ和え?

それって黒岩くんのお店のお弁当だよね?



そっか、そっか。今日は土曜日か。

夕飯用に、弟が買いに行ってくれたんだ。