私のことが嫌いなのに、声をかけてくれたのかな?

傘を返すために。



でもごめんね。

私は今、誰かと関わる心の余裕なんてないんだ。


これ以上、悲しみを刺激されたら、大泣きしちゃいそうなの。



でも、みんなの前では絶対に泣きたくない。

だから今は、私のことは放っておいてください。



「その傘……捨ててくれていいから……」



私はうつむいたまま友梨佳ちゃんの横を通りすぎ、前のドアから自分の教室に入った。



もうすぐ朝のHRが始まる時間。

席に座らなきゃいけない。


でも……

この教室にいたくない……



私は自分の席まで歩き、カバンを肩にかけると



「由乃ちゃん、帰るの?」



隣の席に座る桃園くんの言葉に反応することなく、教室から逃げ出した。