「んー…なんて言えばいいんだろう。恥ずかしくて……めちゃくちゃ緊張するけど、でもすっごく幸せな気分になるよ」

「した後のなんとも言えない気まづさがちょっといいよね」

「分かる! で、ついついもう1回しちゃうの」

「何回やっても幸福感やばい」



キストークに花を咲かせる友人達。


私はその輪の中にいながら「へ〜!」とか相槌をかますだけ。


キスの経験は一応あり、だけど。

私はこの会話には入れない。



だって……



「千紗〜」

「あ。佑斗」



教室のドアからひょっこりと顔を出して私の名前を呼ぶこの人は、幼稚園の頃からずっと同じ学校に通っている幼馴染の佑斗(ユウト)。


クラスが違っても、ちょくちょくこっちにやってくる。



「なに?」

「漢字テストの範囲教えて。次俺らのクラスだから」

「あー、はいはい。ちょっとまって。さっきメモっといたから」

「サンキュー 助かる」



「ちょっとごめんね」と友達に告げて佑斗の元に向かう。