「うん。美味しい」

「………え。嘘だ、なんの冗談?」

「不味くないよ」

「う…嘘だ!こんなに黒いのに!?」

「見た目はあれでも味は悪くない。」



ジトッと疑いの目を向ける私。


その目を向けられながらも、佑斗は私と同じように失敗した生地を小さくちぎった。



「疑うなら、千紗も食べてみなよ」

「え……いいよ私は……

…………って。ちょ、ちょっと!」



グッと掴まれた顎。


ニゲラレナイ。



「口、開けろ。」



佑斗に見下ろされ、私は少し恥ずかしさを感じながらも言われた通りに小さく口を開けた。


佑斗の手が、指が

口先に触れて



「な? 悪くないだろ」



口内に広がる良い甘さ。


唇に残る、指先の感覚。



「………うん。確かに、悪くないかも…」



悪くないのに、身体はなんだかむず痒くなった。