ある日の休み時間。

廊下にある個人ロッカーを開けていた時、隣の教室からちょうど千紗が出てきた。

俺と同じようにロッカーを開ける千紗はまだ俺に気づいていない。

こういう時、普段なら話しかけていた。

特に用事が無かったとしても。

だが、今は。



「………………」

「………………」



例え目が合っても会話は無し。

毎度千紗は何か言いたそうな顔を浮かべるが、その何かを言葉にすることはなく、どこか逃げるように教室の中へと戻って行く。