〜課外授業2日目〜
航也は朝起きるとすぐに携帯を確認する。
華からの連絡が無くて胸をなでおろす。
時刻は6時半。
2人は身支度を整え、翔太は朝食会場の手伝いへ、航也は美優の部屋へ向かう。
ノックをすると華が出てくる。
「航也、おはよう」
「おはよう。起きてたか?」
「うん、もう少しで朝ご飯の時間だもんね。美優も起きて着替え終わったところ。夜中美優ぐっすりだったよ」
「ありがとうな」
華の頭をクシャっとする。
中に入るとベッドに座る美優がニコッと微笑む。
「美優、おはよう。良く寝れたか?」
「うん、よく寝れた!」
航也は念入りに診察をしていく。
「よし、顔色もいいな。本当に安心したよ。じゃあ、俺先に行ってるから、ゆっくり2人で食堂においで」
そして到着した順に朝食を食べる。
バイキングになっていて、自分が食べられる分だけ取れるのは嬉しい。
航也や翔太は既に食べ終わって、食堂の一角で、今日のハイキングについて医者、看護師、先生、ボランティアの代表者とミーティングをしている。
美優と華のテーブルに昨日の医学生がやってきた。
「美優ちゃん…昨日は大変な思いさせて…自分の行動のせいで…苦しい思いさせてしまってごめんなさい」
「いぇ、いいんです。私もちゃんと断らないといけなかったのに…ごめんなさい」
お互い謝り合って済ませた。
まだ1泊あるし、気まずいのは嫌だから、もうあまり考えるのはよそう…
華はこの後子供達とハイキングに行く予定。
私は航也の許可が出ればいいけど…無理だろうな…
ミーティングを終えた航也が美優の元に来る。
「美優、今日のハイキングだけどさ、みんなと行くのは厳しいと思うから、湖の周りを散策するのはどうかな?俺がハイキング終わって帰ってきてから一緒に少し散歩しよ?」
「うん。自分もみんなとは無理だなって思ってたから大丈夫。みんながハイキングから帰って来るまで休んでるね」
航也は申し訳そうに言うが、自分がハイキングに行った所で、みんなのペースには付いてはいけないし、自分のせいで1人スタッフが取られるのは申し訳ない。
美優と数名の看護師が宿泊施設に待機する形になり、奈々ちゃんやレン君を含めた小学生組もハイキングに参加できるみたいで良かった。
華、翔太、航也もハイキングに同行することになり、時間になってみんなを見送る。
大体帰ってくるのは2時間後。
美優はそれまで看護師さんたちと談笑したり、食堂の片付けや昼食に向けての準備を手伝ったり、無理のない範囲でやらせてもらう。
でもやっぱり…昨日大きな発作を起こした代償は大きく、疲れやすくなってしまった。
見兼ねた看護師さんが声を掛けてくれる。
「美優ちゃん、みんなが帰って来るまでお部屋で休んでる?
夜はビンゴ大会もあるし、夜に備えて少し休んでおいで」
美優はありがたく自分の部屋で休ませてもらう。
ベッドに入るとすぐに眠りに引き込まれていった。
「みゆ、美優?」
「航也?」
航也が心配そうに覗き込んでいる。
「うん、ただいま。ハイキングから帰って来たよ。看護師さんから疲れてたみたいで部屋で休んでるって聞いて、心配で来てみた。大丈夫か?」
「うん。少し疲れたから休んでたら、いつの間にか寝ちゃった」
「いいんだよ。寝れる時に寝てて。お昼になったけど、食堂行ける?お昼ご飯」
「うん」
ベッドから立ち上がろうとすると、一瞬視界が揺れた。
「美優っ!大丈夫か?クラクラする?」
「ちょっと…」
「ゆっくりでいいぞ。一旦ベッドに座ろう。目下げるよ。
…ちょっと貧血出てんな。昼飯食ったら鉄剤の内服しよう」
めまいが落ち着いたのを確認し、航也と食堂に行く。
昼食を食べた後、看護師さんから鉄剤をもらって飲む。
午後は自由行動。
部屋で過ごす子もいれば、アヒルのボートに乗りに行く子もいる。湖のカモにエサをやったり。
ボランティアや看護師さんは子供達に合わせて行動する。
美優は約束通り、航也と湖の周りを散歩に行く。
ゆっくりゆっくり美優のペースで歩く。
「美優?色々あったけど、どうだった?」
「うん、なんか発作ばかり起こして自分でもびっくりだったけど、きれいな景色も見れたし、子供達とも触れ合えたし、来てよかった。ありがとう」
「そうだな。明日病院に戻ったらまた治療の日々になるけどさ、たまには息抜きでこうして遠出もしてみような」
「うん!」
20分くらい歩いて宿泊施設に戻る。
航也から予防的に処置室でネブライザーを受けるように言われ、渋々受けてそのまま処置室のベッドで休むことになった。
処置室にはベッドが2台あって、美優が休んでいるとまたすぐに眠りに落ちていった。
どのくらい寝たのだろう、外は日が陰り夕方になっているのがわかった。
ボーっと天井を見つめていると華が入ってきた。
「美優?起きてた?」
「うん。みんなは?」
「翔太はビンゴ大会の準備してる(笑)航也は牧田先生達とミーティングしてるよ。小さい子たちは食堂のテレビでアニメのDVD見てるし、美優もみんなの所行く?」
「うん」
華に言われベッドから立ち上がるとやっぱり貧血が出ていて、めまいがする。
立ったは良いけど立ちくらみがして、その場に座り込む。
「美優!どうしたの?クラクラくる?」
「華…ごめん…ハァ、ハァ、休めば…大丈夫」
めまいと動悸がする。目がチカチカしてよく前が見えない。
いつの間にか華はいなくなっていた。
〜食堂〜
華はミーティングを終えた航也に声を掛ける。
「航也!美優起きたんだけど、めまいと動悸がするみたい」
「ん、わかった」
航也は急ぎ足で処置室に向かう。
「美優?大丈夫か?ちょっと症状言える?」
「めまいと…心臓がドキドキしてる…」
「わかった。ベッドに横にするよ。ちょっと血圧測らせてな」
「ん〜血圧低いな。貧血も出てるし、ちょっと疲れたんだな。心臓がドキドキしてるのは貧血になると頻脈になるからね、それでだよ。今日の夜はゆっくりしてよ。食堂行く?」
「うん、もう少し休んでる」
「わかった。夕飯の時間になったらまた来るな」
航也と華は出て行った。
〜航也と華〜
「美優…大丈夫かな?」
「昨日大きい発作が出たし、環境も変わったらな、だいぶ疲れてるわ。明日病院戻ったらちゃんと管理しないといけないけど、あんま美優に言うとな…気にして滅入るから」
「そうだね、いつも通りに接するね」
「ありがとな、華」
それから夕飯の時間になり、美優も食堂に来て食べ始める。
しかし食欲がすっかり落ちてしまい、半分食べるのがやっと。
見兼ねた看護師が声を掛ける。
「美優ちゃん、無理しなくていいわよ。大丈夫?食べたら少し横になろうか?」
美優は頷く。
夕食後、そのまま食堂でビンゴ大会が開かれる。子供達のお楽しみ行事の1つ。スタッフ全員も参加し、みんなに何かしらの景品が行き渡るようになっている。
美優は起き上がっていることも辛くなり、看護師さんに連れてきてもらい、食堂の端にあるソファに座る。
翔太がビンゴカードを配りに来てくれた。
「美優、大丈夫か?ソファに座ったままでいいよ。航也呼ぶか?」
「うぅん、大丈夫」
美優はソファに体を預けたまま、ビンゴカードの真ん中を開ける。
看護師さんが脈を測ってくれる。
「美優ちゃんちょっと脈が早い感じするけど、ドキドキするかな?」
「少しだけ…」
「ゆっくり深呼吸しようね。ビンゴ大会の途中でも具合悪くなったら言って」
「はい、私1人で大丈夫です」
看護師さんが付き添ってくれるんだけど、それも悪いし…少し1人でゆっくり座っていたい…
「そう、じゃあまた来るね」
美優の気持ちを察してくれたのか看護師さんはすんなり去ってくれた。
(はぁ、ビンゴ大会楽しみにしてたのにな…)
航也は他の子の所を回ってる。
そのうちビンゴ大会が始まり、ボランティアの人が番号を読み上げる…
最初は番号の穴を開けていたんだけど、だんだんと眠くなってきた…
気付くと部屋のベッドに寝ていた。
(あれ、ビンゴ大会…してて…)
隣のベッドには華はいない。
ゆっくり寝室を出ると華と航也がいた。
「あっ、美優起きか?ビンゴ大会の途中で寝ちゃったから連れて来たよ。こっちおいで」
航也に言われてボーッとしながら座る。
「まだボーっとしてるな。熱測らせて」
ピピピッ
「37.8か…熱出てきたな。苦しくはない?」
「うん、大丈夫」
「美優、これ美優のビンゴの景品だよ。代わりにもらってきた」
華が紙袋を1つくれる。
開けてみると、可愛いハリねずみのぬいぐるみだった。
「ありがとう。ふかふかしててかわいい!うれし…ありがと。コホッ」
「ハハ、ハリネズミか。可愛いな」
「本当だ!美優って何でそんなにぬいぐるみが似合うの(笑)」
航也と華が笑い、美優も微笑む。
それから華とお風呂に入って部屋に戻ると、翔太も来ていて、2人が雑談しながら待っていた。
「おかえり」
翔太がひょこっと顔を出す。
「翔太、お疲れ様」
「美優大丈夫か?熱あるんだって?」
「うん…みたい(笑)」
「美優やっぱり体熱い感じするから、長湯しないで出てきた」
華が伝える。
「そっか、美優こっちおいで。胸の音と熱測らせて?」
航也は聴診器で胸の音を聞いていく。
「ん、ちょっとゼイゼイしてるな」
ピピピッ
「37.8か…変わらずだな。寝る前に薬飲もう」
美優に解熱剤を飲ませる。
そのままベッドに運び寝かせると、美優はハリネズミのぬいぐるみを抱いて、すぐにスースー寝息をたてる。
(可愛いな…)
航也は微笑んで寝室を出る。
「華、美優寝たから。俺ら部屋に戻るから、何かあったら連絡して?ん?華もちょっと顔色悪くないか?」
「あぁ、確かにな」
航也の言葉に翔太も賛同する。
「えっ、あ、うん…大丈夫…」
「華、航也に診てもらいな」
「ちょっとごめんな。手首かして?熱も測ろう?」
「うん、熱はないね。脈も大丈夫だな。だけど、顔色が良くないし、華も動き回って疲れただろ?ゆっくり休みな?」
そう行って2人は部屋を出て行った。
華もボランティアとして2日間動き回って、体は正直疲れた。
華もベッドに入ってすぐに眠りについた。
翌朝、華はすっきりと目覚めた。体調はすっかり良くなっていた。
隣の美優はまだ寝ていて、汗をびっしょりかいている。
おでこに手をやると明らかに熱く、体温計を挟むと38.5。
華は航也の携帯に連絡し熱があることを伝える。
しばらくすると翔太と航也が入ってきた。
「華おはよう。華は体調は?」
「ありがとう。私は寝たらすっきり。でも美優が…」
航也と翔太はまず華の様子を確認して、美優のベッドに向かう。
「美優?起きれる?」
熱のせいで息が上がってる。
「ん…みんな…」
「美優、朝ご飯の時間だけど食堂行けそう?」
「ん…朝ご飯食べたくない…食べなくてもいい?」
力なく答える。
「わかった。翔太、バスの出発って10時だっけ?」
「うん、そう」
「まだ2時間あるな。美優?朝ご飯食べない代わりに点滴だけさせて?」
「うん…」
点滴の用意をして刺す。
「美優大丈夫か?」
翔太が航也に尋ねる。
「あぁ、だいぶ辛そう。バスの時間になるまで部屋で休ませるわ」
3人はそのまま朝食を食べて、華がバスの時間まで部屋で付き添う。
終わった点滴を抜き、美優をバスに乗せる。
状態が良くないため、隣は航也が座ることになった。
点滴をして少し状態は落ち着いたが、ぐったりしている。
「美優、病院着くまで寝てな」
美優は頷き、病院に着くまでの2時間1度も起きることはなかった。
病院に着いて、美優を抱いて病室に運ぶ。
急いで点滴、酸素投与をして様子を見ることになった。
それから体調が良くなったり悪くなったり、日によって体調に波がある状態がしばらく続いて1週間近くかけて回復した。
航也は朝起きるとすぐに携帯を確認する。
華からの連絡が無くて胸をなでおろす。
時刻は6時半。
2人は身支度を整え、翔太は朝食会場の手伝いへ、航也は美優の部屋へ向かう。
ノックをすると華が出てくる。
「航也、おはよう」
「おはよう。起きてたか?」
「うん、もう少しで朝ご飯の時間だもんね。美優も起きて着替え終わったところ。夜中美優ぐっすりだったよ」
「ありがとうな」
華の頭をクシャっとする。
中に入るとベッドに座る美優がニコッと微笑む。
「美優、おはよう。良く寝れたか?」
「うん、よく寝れた!」
航也は念入りに診察をしていく。
「よし、顔色もいいな。本当に安心したよ。じゃあ、俺先に行ってるから、ゆっくり2人で食堂においで」
そして到着した順に朝食を食べる。
バイキングになっていて、自分が食べられる分だけ取れるのは嬉しい。
航也や翔太は既に食べ終わって、食堂の一角で、今日のハイキングについて医者、看護師、先生、ボランティアの代表者とミーティングをしている。
美優と華のテーブルに昨日の医学生がやってきた。
「美優ちゃん…昨日は大変な思いさせて…自分の行動のせいで…苦しい思いさせてしまってごめんなさい」
「いぇ、いいんです。私もちゃんと断らないといけなかったのに…ごめんなさい」
お互い謝り合って済ませた。
まだ1泊あるし、気まずいのは嫌だから、もうあまり考えるのはよそう…
華はこの後子供達とハイキングに行く予定。
私は航也の許可が出ればいいけど…無理だろうな…
ミーティングを終えた航也が美優の元に来る。
「美優、今日のハイキングだけどさ、みんなと行くのは厳しいと思うから、湖の周りを散策するのはどうかな?俺がハイキング終わって帰ってきてから一緒に少し散歩しよ?」
「うん。自分もみんなとは無理だなって思ってたから大丈夫。みんながハイキングから帰って来るまで休んでるね」
航也は申し訳そうに言うが、自分がハイキングに行った所で、みんなのペースには付いてはいけないし、自分のせいで1人スタッフが取られるのは申し訳ない。
美優と数名の看護師が宿泊施設に待機する形になり、奈々ちゃんやレン君を含めた小学生組もハイキングに参加できるみたいで良かった。
華、翔太、航也もハイキングに同行することになり、時間になってみんなを見送る。
大体帰ってくるのは2時間後。
美優はそれまで看護師さんたちと談笑したり、食堂の片付けや昼食に向けての準備を手伝ったり、無理のない範囲でやらせてもらう。
でもやっぱり…昨日大きな発作を起こした代償は大きく、疲れやすくなってしまった。
見兼ねた看護師さんが声を掛けてくれる。
「美優ちゃん、みんなが帰って来るまでお部屋で休んでる?
夜はビンゴ大会もあるし、夜に備えて少し休んでおいで」
美優はありがたく自分の部屋で休ませてもらう。
ベッドに入るとすぐに眠りに引き込まれていった。
「みゆ、美優?」
「航也?」
航也が心配そうに覗き込んでいる。
「うん、ただいま。ハイキングから帰って来たよ。看護師さんから疲れてたみたいで部屋で休んでるって聞いて、心配で来てみた。大丈夫か?」
「うん。少し疲れたから休んでたら、いつの間にか寝ちゃった」
「いいんだよ。寝れる時に寝てて。お昼になったけど、食堂行ける?お昼ご飯」
「うん」
ベッドから立ち上がろうとすると、一瞬視界が揺れた。
「美優っ!大丈夫か?クラクラする?」
「ちょっと…」
「ゆっくりでいいぞ。一旦ベッドに座ろう。目下げるよ。
…ちょっと貧血出てんな。昼飯食ったら鉄剤の内服しよう」
めまいが落ち着いたのを確認し、航也と食堂に行く。
昼食を食べた後、看護師さんから鉄剤をもらって飲む。
午後は自由行動。
部屋で過ごす子もいれば、アヒルのボートに乗りに行く子もいる。湖のカモにエサをやったり。
ボランティアや看護師さんは子供達に合わせて行動する。
美優は約束通り、航也と湖の周りを散歩に行く。
ゆっくりゆっくり美優のペースで歩く。
「美優?色々あったけど、どうだった?」
「うん、なんか発作ばかり起こして自分でもびっくりだったけど、きれいな景色も見れたし、子供達とも触れ合えたし、来てよかった。ありがとう」
「そうだな。明日病院に戻ったらまた治療の日々になるけどさ、たまには息抜きでこうして遠出もしてみような」
「うん!」
20分くらい歩いて宿泊施設に戻る。
航也から予防的に処置室でネブライザーを受けるように言われ、渋々受けてそのまま処置室のベッドで休むことになった。
処置室にはベッドが2台あって、美優が休んでいるとまたすぐに眠りに落ちていった。
どのくらい寝たのだろう、外は日が陰り夕方になっているのがわかった。
ボーっと天井を見つめていると華が入ってきた。
「美優?起きてた?」
「うん。みんなは?」
「翔太はビンゴ大会の準備してる(笑)航也は牧田先生達とミーティングしてるよ。小さい子たちは食堂のテレビでアニメのDVD見てるし、美優もみんなの所行く?」
「うん」
華に言われベッドから立ち上がるとやっぱり貧血が出ていて、めまいがする。
立ったは良いけど立ちくらみがして、その場に座り込む。
「美優!どうしたの?クラクラくる?」
「華…ごめん…ハァ、ハァ、休めば…大丈夫」
めまいと動悸がする。目がチカチカしてよく前が見えない。
いつの間にか華はいなくなっていた。
〜食堂〜
華はミーティングを終えた航也に声を掛ける。
「航也!美優起きたんだけど、めまいと動悸がするみたい」
「ん、わかった」
航也は急ぎ足で処置室に向かう。
「美優?大丈夫か?ちょっと症状言える?」
「めまいと…心臓がドキドキしてる…」
「わかった。ベッドに横にするよ。ちょっと血圧測らせてな」
「ん〜血圧低いな。貧血も出てるし、ちょっと疲れたんだな。心臓がドキドキしてるのは貧血になると頻脈になるからね、それでだよ。今日の夜はゆっくりしてよ。食堂行く?」
「うん、もう少し休んでる」
「わかった。夕飯の時間になったらまた来るな」
航也と華は出て行った。
〜航也と華〜
「美優…大丈夫かな?」
「昨日大きい発作が出たし、環境も変わったらな、だいぶ疲れてるわ。明日病院戻ったらちゃんと管理しないといけないけど、あんま美優に言うとな…気にして滅入るから」
「そうだね、いつも通りに接するね」
「ありがとな、華」
それから夕飯の時間になり、美優も食堂に来て食べ始める。
しかし食欲がすっかり落ちてしまい、半分食べるのがやっと。
見兼ねた看護師が声を掛ける。
「美優ちゃん、無理しなくていいわよ。大丈夫?食べたら少し横になろうか?」
美優は頷く。
夕食後、そのまま食堂でビンゴ大会が開かれる。子供達のお楽しみ行事の1つ。スタッフ全員も参加し、みんなに何かしらの景品が行き渡るようになっている。
美優は起き上がっていることも辛くなり、看護師さんに連れてきてもらい、食堂の端にあるソファに座る。
翔太がビンゴカードを配りに来てくれた。
「美優、大丈夫か?ソファに座ったままでいいよ。航也呼ぶか?」
「うぅん、大丈夫」
美優はソファに体を預けたまま、ビンゴカードの真ん中を開ける。
看護師さんが脈を測ってくれる。
「美優ちゃんちょっと脈が早い感じするけど、ドキドキするかな?」
「少しだけ…」
「ゆっくり深呼吸しようね。ビンゴ大会の途中でも具合悪くなったら言って」
「はい、私1人で大丈夫です」
看護師さんが付き添ってくれるんだけど、それも悪いし…少し1人でゆっくり座っていたい…
「そう、じゃあまた来るね」
美優の気持ちを察してくれたのか看護師さんはすんなり去ってくれた。
(はぁ、ビンゴ大会楽しみにしてたのにな…)
航也は他の子の所を回ってる。
そのうちビンゴ大会が始まり、ボランティアの人が番号を読み上げる…
最初は番号の穴を開けていたんだけど、だんだんと眠くなってきた…
気付くと部屋のベッドに寝ていた。
(あれ、ビンゴ大会…してて…)
隣のベッドには華はいない。
ゆっくり寝室を出ると華と航也がいた。
「あっ、美優起きか?ビンゴ大会の途中で寝ちゃったから連れて来たよ。こっちおいで」
航也に言われてボーッとしながら座る。
「まだボーっとしてるな。熱測らせて」
ピピピッ
「37.8か…熱出てきたな。苦しくはない?」
「うん、大丈夫」
「美優、これ美優のビンゴの景品だよ。代わりにもらってきた」
華が紙袋を1つくれる。
開けてみると、可愛いハリねずみのぬいぐるみだった。
「ありがとう。ふかふかしててかわいい!うれし…ありがと。コホッ」
「ハハ、ハリネズミか。可愛いな」
「本当だ!美優って何でそんなにぬいぐるみが似合うの(笑)」
航也と華が笑い、美優も微笑む。
それから華とお風呂に入って部屋に戻ると、翔太も来ていて、2人が雑談しながら待っていた。
「おかえり」
翔太がひょこっと顔を出す。
「翔太、お疲れ様」
「美優大丈夫か?熱あるんだって?」
「うん…みたい(笑)」
「美優やっぱり体熱い感じするから、長湯しないで出てきた」
華が伝える。
「そっか、美優こっちおいで。胸の音と熱測らせて?」
航也は聴診器で胸の音を聞いていく。
「ん、ちょっとゼイゼイしてるな」
ピピピッ
「37.8か…変わらずだな。寝る前に薬飲もう」
美優に解熱剤を飲ませる。
そのままベッドに運び寝かせると、美優はハリネズミのぬいぐるみを抱いて、すぐにスースー寝息をたてる。
(可愛いな…)
航也は微笑んで寝室を出る。
「華、美優寝たから。俺ら部屋に戻るから、何かあったら連絡して?ん?華もちょっと顔色悪くないか?」
「あぁ、確かにな」
航也の言葉に翔太も賛同する。
「えっ、あ、うん…大丈夫…」
「華、航也に診てもらいな」
「ちょっとごめんな。手首かして?熱も測ろう?」
「うん、熱はないね。脈も大丈夫だな。だけど、顔色が良くないし、華も動き回って疲れただろ?ゆっくり休みな?」
そう行って2人は部屋を出て行った。
華もボランティアとして2日間動き回って、体は正直疲れた。
華もベッドに入ってすぐに眠りについた。
翌朝、華はすっきりと目覚めた。体調はすっかり良くなっていた。
隣の美優はまだ寝ていて、汗をびっしょりかいている。
おでこに手をやると明らかに熱く、体温計を挟むと38.5。
華は航也の携帯に連絡し熱があることを伝える。
しばらくすると翔太と航也が入ってきた。
「華おはよう。華は体調は?」
「ありがとう。私は寝たらすっきり。でも美優が…」
航也と翔太はまず華の様子を確認して、美優のベッドに向かう。
「美優?起きれる?」
熱のせいで息が上がってる。
「ん…みんな…」
「美優、朝ご飯の時間だけど食堂行けそう?」
「ん…朝ご飯食べたくない…食べなくてもいい?」
力なく答える。
「わかった。翔太、バスの出発って10時だっけ?」
「うん、そう」
「まだ2時間あるな。美優?朝ご飯食べない代わりに点滴だけさせて?」
「うん…」
点滴の用意をして刺す。
「美優大丈夫か?」
翔太が航也に尋ねる。
「あぁ、だいぶ辛そう。バスの時間になるまで部屋で休ませるわ」
3人はそのまま朝食を食べて、華がバスの時間まで部屋で付き添う。
終わった点滴を抜き、美優をバスに乗せる。
状態が良くないため、隣は航也が座ることになった。
点滴をして少し状態は落ち着いたが、ぐったりしている。
「美優、病院着くまで寝てな」
美優は頷き、病院に着くまでの2時間1度も起きることはなかった。
病院に着いて、美優を抱いて病室に運ぶ。
急いで点滴、酸素投与をして様子を見ることになった。
それから体調が良くなったり悪くなったり、日によって体調に波がある状態がしばらく続いて1週間近くかけて回復した。

