僕の出番は、

「ただ泣く」
と、

お姉さん役の女優さんに、
「すがって泣く」

の、
2シーンだけ
だったの、だけれど。



両方とも

「はい!カーット!

 お母さんが泣かれたので
 オッケーい!」

と監督がいい
振り向くと母が泣きながら
笑い転げていた。

つられて皆も笑った。


 そうして撮影は進んでいった。



 僕が衣装に着替えて、
出番を待つ間

急におしっこに行きたくなり、モジモジしていると。


監督がそれに気付き、
衣装さんから何か受け取って、
僕をトイレに連れて行ってくれた。


 トイレに着くと、
監督は、
裾を洗濯ばさみで留めてくれ、

「これで覚えただろう?」

と、言って、
笑った。


僕は大急ぎで用を足した。