魔王の婚約者

 いよいよ、井川なぎさは船に乗せられる。
 トーセアイランド、ワグタウン東の港。そこはきれいな砂浜だった。
 それはうだるように暑い夏だった。空は曇っていた。港には木造りの巨大な帆船、魔法船アンドロメダが。白い帆があった。船の先には角のようなものが出ていた。それはまるで、おとぎ話から出てきたようなメルヘンチックな船であった。船には色とりどりの宝石がちりばめられていた。
 砂浜から船にスロープがかけられていた。
 砂浜には人々が集まっていた。井川なぎさの入った箱があった。
 箱の中で眠りについている井川なぎさ。それはそれは美しかった。侯爵は泣きながら見た。
 「では、娘さんを船に入れますので」
 と、トーセアイランド、ワグタウンの青年団の若い男が言った。侯爵は離れた。若い男は箱のふたをしめた。
 若い男衆が井川なぎさの入った箱を持ち上げた。そうして、橋本六助の先導で、船へのスロープを上がって行った。船の中へ入っていった。そうして、船の中の部屋に入った。
 「ここに設置するにゃ」
 と、六助。
 若い男衆はなぎさの入った箱を設置した。
 六助は箱の前で手を合わせた。
 「どうか無事、スサノオ様のところへ着きますように」
 「さあ、出るにゃあ」と六助は若い男衆にいった。