ベアトリスは、おずおずとそれを手に取ると、指に嵌めてみる。ふわっとベアトリスの体が鈍い光を発する。
じっとベアトリスのほうを見ていたカインは、ふわっと破顔した。
「よし。成功」
「え? 成功?」
ベアトリスは聞き返す。
(もしかして、もう姿が変わっている?)
部屋を見回したベアトリスは、片隅に鏡が掛かっているのを見つける。立ち上がって鏡のほうへ行くと、おずおずと中身をのぞき込んだ。
「わあ……」
思わず感嘆の声を上げる。
鏡の中には、ベアトリスと同じくらいの歳頃のひとりの可憐な女性が映っていた。顔の造作はベアトリスに似ているのだが、少し下がった眦が優しげな印象だ。髪の毛は艶やかな黒色で、目は焦げ茶色をしている。
(すごい。これでは、誰もわたくしだってわからないわ)
鏡の前で右を向き、次に左を向く。どの方向から見ても、ベアトリスには見えない。
「カインさん。これ、少しだけ借りていても? 夕方前には返しますので」
「うん」
「ありがとうございます!」
ベアトリスは満面の笑みを浮かべ、カインにお礼を言ったのだった。



