「ところで、今日は随分と首元の詰まった服を着ているのだな」

 アルフレッドに意味ありげに聞かれ、ベアトリスは自分の首元を両手で押さえる。

「これは……アルフレッド殿下のせいです!」
「俺のせい?」
「咄嗟のこととはいえ、こんなにはっきりと──」

 ベアトリスは顔を赤らめる。

 先ほど風呂に入るときにフローラに「あらあら、まあまあ」と意味ありげに微笑まれて気付いたのだが、ベアトリスの首元にはしっかりとキスマークが付いていた。
 身に覚えがないので、今日のあのときに付けられたとしか考えられない。

「なんてことをしてくれるのですか! もう、恥ずかしくって……」
「助けてやったのに、よく言う。俺がジャンの姿のときに踏み込まれたら、困ったことになるのはお前だ」
「でも、これは付ける必要がなかったと思います」

 ベアトリスはちょうどキスマークを付けられた辺りを右手の人差し指で指す。

「これとは?」

 意地悪い顔で聞き返され、ベアトリスは言葉に詰まる。

「この意地悪王子!」

 顔を真っ赤にするベアトリスを見て、アルフレッドは今日も肩を揺らしたのだった。