黒崎くんに聞いたら答えてくれるだろうか。まるで私から逃げるように、速足で帰っていった黒崎くん。


 教えてほしい。

 幸記くんのこと、黒崎くんのこと。
 二人に、何が起こっているのかを。


 きゅ、と指を握りしめて、私は窓ガラスごしに見える灯りをながめた。

 家々をかざる灯りは星みたいだ。暗い夜道を明るく照らしてくれるのに、とても遠い。


 ふいに私は、数週間前に聞いた言葉を思い出した。


 オレンジ色に染まった美術室。今にもこちらを向きそうな、愛らしいネズミの絵。私の横でうつむいていた黒崎くんの、細い鼻筋。


『……淘汰されることを前提とした命って何なんだろうな』

 
 レミング。

 自殺するネズミなんて呼ばれる、小さく儚い命。


 そのやるせない印象に黒崎くんが何を重ねていたのか、ほんの少し、答えが見えた気がした。